笑顔の宣告

 随分と身勝手な考えだと、彼女自身も自覚していた。もっと丁寧にすべきではないだろうかと、全力を尽くすべきではないかと、彼女自身も自問自答した。それでも、どうしても勇気が足りなかったから、こんな手段に逃げてしまった。
「ねぇねぇ、諸葛誕先輩! 私の事ってどう思うます? 私って結構かわいくないですか?」
友人と一緒に、偶然通りかかった風紀委員の先輩へ、からかうように声をかける。彼女が奮える勇気は、これが精一杯だった。
「……ええ、まぁ。髪型や服装も校則通りですし、笑顔も素敵だと思います」
 突然の質問でわずかに戸惑った後の、穏やかな笑顔と落ち着きのもとで返された無難な答え。きっと諸葛誕本人は気付いていないだろう、すぐ動揺して顔に出し、嘘が下手な諸葛誕自身の性分を。その性分を知っている者から見れば、彼女に対して特別な感情など全くないのだと、痛いほどにわかってしまう。
「そうですよね、ありがとうございます!」
 あくまで、ただの冗談だから。彼女は自分に言い聞かせて笑い、憧れていた先輩の背を見送りながら、ポロポロと涙をこぼす。


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