黒と白

真っ白の世界に映える印象的な青い目。まるでひとつだけ色を灯したかのように輝く瞳を、俺はずっと見ていた。君が誰なのか、全くわからないけど感覚で理解できる気がした。こればかりはほんとうに自分でもよくわからない。

「君は誰なんだ」
「さて誰でしょう!」
「オイはぐらかすな」
「だって大したことじゃないもの。それに、なんとなくわかってはいるでしょ?」
「…微妙。答えづらい」
「あらま」

にこにこ笑って、どこまでも白い世界を駆ける君。ふわりと揺れるポニーテールをぼんやり眺めながら思考を整理する。君と俺はとても容姿が似ていて、なんだかまるで片割れみたいな印象だ。でも、そんなことってあるだろうか。わからないな。すっきりしないもやもや感が残り眉を顰める。ああ、答えがほしい。

「そんなに急いで答えを求めなくても」
「勝手に思考を読むな」
「しょうがないしょうがない。この世界はそういう作り」
「嫌な作りだな。プライバシーもなにもない」
「あははっ。確かにね。まあ私と貴方は繋がってるから、この世界じゃなくてもわかったりして」
「御免蒙る」
「気持ちはわからないでもない。誰だって覗かれるのは嫌よね」
「当たり前だ」

ったく、わけわからん。この世界も君の存在も、俺がここにいる意味も。君はきっと知っている。だけど俺はなにも知らない。その事実が妙に焦りを増幅させて落ち着かない。一体なんだっていうんだこれは。

「…あ!お目覚めの時間」
「は?」
「ね、君の物語が始まるよ。同一の存在はたくさんいるけど、個としての、君だけの物語。頑張ってね、えーと……×××。また――ね」
「は?聞こえな、」

ばちん。唐突に世界が切り替わる。ぐるぐると脳味噌を掻き回される様な感覚に視界が歪み、耳鳴りが酷く鮮明に全身へと響き渡る。気持ち悪い嘔吐感に苛まれながら、沈む、沈む意識の中。最後まで俺はキラキラと輝く青い瞳から目を離さないまま、思考は白から黒になり、また白へと還る。

「あー…名前、知りたかったな――……」

ふたりの存在
はじまるはじまる、白と黒の物語。



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