高校時代までの私とはお別れした。眼鏡はコンタクトにした。ただ伸ばしていただけだった黒髪はライトブラウンに染めて緩いパーマをかけた。猫背を直して、綺麗に歩くように心掛けた。毎日化粧をするようにした。今まで私を馬鹿にした奴を見返してやる。たったそれだけの理由で私は変わった。どのくらい変わったかというと大学入学時に再会した従兄弟に話かけたら『お宅どちらさん?』と聞き返されたくらいだ。そんな結果、私は好かれやすくなった。いい意味でも悪い意味でも。

そんな革命が起こった季節がまた巡ってきた。春だ。私はいま、例の従兄弟と大学の表門に向かって歩いている。



「銀ちゃん、帰りにパフェ食べよ」
「んなもん彼氏と行けよ」
「別れた」
「またか」
「またです」



春といえば、ほら、出会いの季節であり別れの季節じゃない。言い訳がましく言ったら、随分と長い春だな、なんて溜息を吐かれた。あぁあ聞こえない、聞こえない。銀ちゃんお得意の皮肉は必要としていない。



「昔はあんなにピュアだったのになあ」
「そんなんいつの話?」
「あぁあ、食べちまいそうなくらい可愛かったのに、今じゃこっちが食われそうだもんなぁ…」
「銀ちゃんじじくさい」
「んなこと言う奴にパフェはねぇかんな」
「もともと奢るつもりなんかなかったくせに」



そんな風に会話をしながら、よく行くファミレスに向かい始めた時だった。後ろから『旦那じゃありやせんか』なんて古めかしい、よく聞かない声が聞こえた。隣で銀ちゃんが明らかに嫌な顔をしたのを怪訝に思って振り返ると、やっぱり知らない顔があった。なんかオーラがきらきらしてる。王子様っていうのはこういうのなんだろうな、と考えた。おとぎ話は夢見ちゃない。よく見ると隣にはいつだったか銀ちゃんといがみ合っていた顔もあった。どちらも違ったタイプでモテそうな顔だ。世の中、見た目がいい人って沢山いるもんだな、なんて隣を見上げながら再確認した。わかりやすく嫌悪感に引きつったままの銀ちゃんの袖をこっそり引く。



「お知り合い?」
「あんな奴らとお知り合いになった覚えはねぇよ。ほら、いくぞ」



そそくさと進もうとする銀ちゃんについていくようにしつつ、もう一度振り返るとふと、王子様(仮)と目が合う。カワイイ顔してるのに、無表情っていうか、ポーカーフェイス。服装もなかなかおしゃれ。性格はもちろん知らないけれど、まあ、面食いには確実にモテるだろうな。一通り観察して、一応の会釈だけしてまた前を向く。
でも、と続ける。きっとこの子とは関係もたないだろうなあ。






◇◆◇






「土方さん、行っちゃいやしたぜ」
「あ?それがどうした。寧ろ好都合だろ」
「にしても旦那って彼女いたんですね」
「…お前は知らねぇか」
「?」
「あの女は坂田の従兄弟で百瀬ななっつって、…まあ、ちょっとした有名人だ」
「有名人?」
「何でも、教授も学生も含めて何人かとできてるって噂だ。本当かどうかは定かじゃあねぇけどな」







20110404


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