そもそも、何故に私があんな人た…あんなステキな先輩方(棒読み)と一緒にご飯を食べているかと言うと、簡潔に3文字以内で表すと『流れ。』だ。決してクラスに居場所がないとかじゃない。断じてそんなことはない。屋上は風も日差しもあって女子が滅多に近寄らないから、女子高生特有のキャピキャピが苦手な私に持ってこいで尚且つ景色も好きだったので昼休みを屋上で過ごしていたら、ある日4時間目をサボっていた部活の先輩、沖田先輩に出くわし、以来昼食をともにしている、という経緯がある。土方先輩はなんやかんやで一緒にご飯を食べている。多分沖田先輩の監視。よく昼の委員会をサボるらしいから。でも土方先輩は委員会がある時以外はほとんどいない。


私には見た目とのギャップがある、悪い意味で。クールなモデルばりの容姿にそぐわぬ、やる気なさげな声と食い意地とまるでダメなおっさん度合い(友人談)。先輩方には最初の頃に大分引かれたと記憶があるが、今はもう昔の話。今じゃ食いかけの弁当も無抵抗に食べられる仲だ。怒られるけど。



「市野ーこれ片しておきなせェ」
「え、嫌です」
「仕事しやがれ」
「それは選手の仕事です」
「片付けはマネージャーの仕事だろィ」
「か、片付けも出来てこそ一流の選手ってどっかで言ってたなあ…」
「みんなー聞いてくれィ、市野の今日のパンツは」「是非とも片付けさせてください沖田先輩いいいい!」



まんまと嵌められて(目の前で着替えたからと言ってスカートの下に短パンを履いていたんだからパンツを見られてる訳がない)掃除に使われたモップの片付けを命じられた私は、ずるずると引きずりながら元いた出口の斜め反対側(つまり一番遠いところ)にある用具入れまで進む。嫌がらせだ、明らかに自分の方が用具入れ近かったくせに。
マネージャー含め部員が早々に着替えに行った為、体育館には私と沖田先輩がいるだけである。ぺたぺた進む私の足音とずるずる引きずるモップが立てる音だけが響く。よくわからないが沖田先輩はまだそこにいるらしい。そんな沖田先輩に振り向かず大声で話し掛ける。



「先ぱーい、片付けしてあげたかわうぃいマネージャーに帰りなんか奢ってくださあい」
「いやでィ。あんたが奢りなせぇ」
「嫌ですー」



帰りが同じ方向なせいか沖田先輩と私は一緒に帰っている。沖田先輩ファンの方には羨ましい限りだろうが、ちっとも楽しくはない。荷物持たされたり、浅い川に突き落とされそうになったり、コンビニで奢らされたりするばかりで。お生憎さま、私はMじゃない。言うなればノーマル、Nだ。つまりファンの気が知れない。
沖田先輩は近いとは言え、先輩は先輩である。私はそのラインを越えては(生きて)いけない(=ファンに殺される)し、越える(=ファンに殺される)つもりもない。先輩は先輩、マネージャーはマネージャー。一緒に帰っているからって、それだけの話。それだけの話。プライベートまでマネジメントとか有り得ない。早く沖田先輩に彼女が出来たらいい。色んな意味で。








2011.0410
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