南向きの窓から吹いてくる風の温もり。司書室の奥に積み重なった古新聞の埃っぽいにおい。壁一面に納められた沢山の書物の背表紙の彩り。
誰も進んでやらない委員会活動を率先してやるのには理由がある。こんな素敵な、本好きには堪らない空間を独り占めできるのに、仕事が面倒で嫌がるなんて、贅沢だと思うからだ。私は本の内容だけでなくて、本そのものが好きだ。だから、背表紙を見ているだけで面白いし、タイトルを読んで中身を想像することだって楽しい。
あと、最近はもう一つ楽しみにしていることがある。




「返却いいっすか?」
「あ、こんにちは!返却できますよ」




お昼休みのちょうど後半辺りにやってくる彼は遊馬崎さん。いつも図書室にいくつかあるライトノベルを一つ借りていって、次の日には返しに来る。その彼とちょこっと会話するこそが私の楽しみだ。
毎日当番しているから遊馬崎さんとは言ってしまえば顔見知りのようなもの。一つ年上だけど、親しみやすいし、話も合うし、ちょっとヲタクっぽい私も、彼自身がかなりのヲタクだから全然気にされてないし、寧ろ語り仲間?として認識されてる、と思う。


「はい、返却完了です。相変わらず読むの早いですねー」
「そんなことないっすよ!話が面白いからこそ一日で読み切れるんす」
「あ、確かにそれわかります!」




こんな感じで始まっていつの間にか、お昼休みが終わってる。それくらいに話が弾んでいる。だから予鈴が鳴った瞬間、ちょっとだけ寂しくなる。でも遊馬崎さんも同じ気持ちだったら嬉しいなあ、なんて。
それにしても、5冊まで借りられるのに、毎日一冊ずつしか借りていかないのは不思議だ。聞いてみたいけど、この時間がなくなってしまうのが嫌だから、聞くのはまだ先でいいや。






その頃。


「狩沢、遊馬崎知らないか?」
「ゆまっちならいつものとこだよー」
「あぁ、図書室か。…でもあいつあそこにあるラノベ全部持ってるよな?」
「…うわあドタチンってば鈍感」
「は?」

(あいつが三次元に興味持つ日がくるとはな)
(ねー)




あとがき:デュラの書くの久しぶり過ぎて口調わからん…というか渡草っちとドタチンの書き分けができない。致命的。



110501

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