朝は苦手なはずなのに、目覚まし時計よりも早くに目が覚めた。6時15分。まだ眠れるような気もするけど、いや、駄目だ、二度寝して遅刻しなかったことってない。用意を始める。
終わった頃には7時30分。普段よりもゆっくりしてこの時間だ。さて、どうしよう。たまには早く登校して勉強するのもいいかなあ。

と、家を出て10分後。

夏服の腕に感じた嫌な予感。ぽつり、ぽつり。雨が降り始める。なんてこった。傘なんて、持って来てない。あぁもうどうしよう!学校までまだ距離あるし…。焦る間も雨脚は強くなる一方。これはもう走るしかないかな…。早起きはなんたらって言ったの誰よ。全然得なんてない。落ちてくる雨粒に目を細めながら、進み始める。ああもう、せめてもう少し止んだらいいのに、なんて思ってたら雨が止んだ。

…え?

いや、そんな訳ない。目線の先には水溜まりには小さな波紋が幾つも。勢いよく振り返った。その瞬間、心臓が裏返った。




「ひ、じかたさん…」
「お前、傘持ってねぇのか?風邪引くぞ」
「あ、いや、だって、出るとき晴れてましたしまさか雨が降るなんて思わなくて…」


ばくばく脈打つ鼓動と空回る舌。私のに合わせてくれている傘の位置とか、歩調とか、呆れたような態度なのに細かいところで見える気遣いにまたしても、キュンとなる。その度に顔に熱が集まる。

もしかして、学校までこのまま?

他愛もない話をしながら、土方さんを見上げる。うわあ、やっぱり、かっこいい。夢みたいな心地の中でぼんやり進む。雨音すら遠くに聞こえた。




「けっこう早い時間に出てんだな」
「いえ、いつももっと遅い時間に出てて…土方さんはいつもこの時間なんですか?」
「いや、俺も今日はたまたまだ」
「そうなんですか?」




すごい偶然。うわ、ほんとにラッキーだったんだ。憧れの先輩と登校できるところか相合い傘、なんて。三文っていくらなのかは知らないけれど、三文以上の得なんじゃないかな。早起き万歳、ついでに雨万歳。なにより優しい先輩に万歳。







あとがき:土方さんが雨に濡れた後輩を家から見かけて急いで出て来たとかだと萌えます



110426

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -