とりあえず崇に心配されないように病室から出てドアを閉めたのはいいんだけど……何これ超気まずい。


「………」
「…………」


何かを話すわけでもなく立ち止まったままわたしの事をガン見するイケメンこと豪炎寺修也くん。蛇に睨まれた蛙のように動けないわたし。
わたし何かした?むしろ豪炎寺くんがわたしに睨まれるべきだと思うのだが。豪炎寺くんは悪くないとわかっているけど、豪炎寺くんを見た時にこの世界の事を思い出してしまったものだから心のどこかに彼の事を恨んでいる自分がいる。

理解するのと納得するのは違う。


「………」
「…、……」


……結構長い時間を思考に費やしていたはずなのに現状は打破されず保たれたままだった。痺れを切らしたわたしは豪炎寺くんに声をかけることにした。一応クラスメイトだし、何も言わずにこの場から去るのはあまりよろしくないだろう。


「豪炎寺くん…だよね?」
「…お前は朝すぐいなくなった……」


どうやら朝一で保健室へと向かったわたしの事は覚えていたらしい。流石に名前は知らないみたいだけど。知ってたら逆に怖いわ。


「帝国のリンクチューナー、鳴海詩季…」
「……!?」


名前どころか前いた学校もばれてました。………って、えええええええ?!何その二つ名的なやつ!すごく中二っぽい!むしろ中二!いや、学年が中二という意味ではなくて…!厨二と表すのが正しいの?とにかく中二!
笑うところなのかなと思ったりもしたけど、豪炎寺くんがあまりにもマジな顔をしていたので笑えませんでした。豪炎寺くんの眼力まじ怖い。


「どうしてお前が雷門に…」
「……転入したから」
「……、…そうか」


不満そうな顔で何か言いたそうにしていたけど飲み込んだらしい。いやいやいや、そんな顔を向けられる理由がわからないんですけど。雷門にいるのは転入したからに決まってるでしょ。


「…………」
「………」
「……じゃあ、わたし行きたい所があるから」
「!…あ、ああ」


再び沈黙が空間を支配した事から特に用はないだろうと判断して、わたしは当初の目的を果たすために自販機コーナーへと向かう事にした。
豪炎寺くんがわたしを知っていた事にも驚いたけど、何が一番驚いたかって恥ずかしい二つ名みたいなのが自分についてたって事だよね。何あれ、もしかしてわたしが知らないだけで中学サッカー界では周知の事実だったりするの?そうだったら恥ずかしくて死ねる。本気で。


「…………」
「………」


…夏未から連絡が入っているかもしれないと思いケータイを確認しようとしたのだが、電源を切っていたので諦めた。そういえばここ病院だから自販機コーナーとかじゃないとケータイ使えないんだよね。若干しょんぼりしながらケータイをポケットへと突っ込んだ。


「……、…」
「………」


………自販機コーナーはまだですか?





 



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