SHRが終わった瞬間にわたしは先生に断りを入れて保健室へ走った。気持ち悪い、の一言に尽きる。


「失礼します……って誰もいない」


どうやら保健の先生は外出中らしく保健室には誰もいなかった。その方が都合がいい。机の上にある用紙に学年と組と名前と症状を記入して一番奥のベッドに座りカーテンを閉める。ボスリとベッドに仰向けに倒れ込んだらホコリが舞った。


「…マジで、一体どうなってんのよ……!」


あの瞬間からずっと頭の中を流れ続ける映像というか知識に頭が着いていかない。わたしはこの世界を少しだけだが知っている。

イナズマイレブン。

超次元サッカーと銘打って子供と大きいお姉さんたちに人気だったゲームが原作のアニメだ。ウチの弟もハマっていたので作品に触れたことは何度かある。とは言え、知っているのは所々の物語と主要な登場人物程度だが。


「超次元サッカー、か…。そりゃあ普通のサッカーとは違うわ」


必殺技とか言って意味のわからないエフェクトや威力が付加されるシュートやドリブル、キャッチにパンチングにその他諸々。最初に見た時は新手のスタンドかと思った。ついに見えるようになってしまったのかと思ったが皆に見えてた。


「くそ、」


ただ単に幼くなって意味不明な特殊能力がついて周りの環境が変わっただけだと思ってた。………いや、それだけでも充分な変化だがな!気づいたら大学生から幼稚園児になってたんだぞ。父さんも母さんも凄い有名人になってるし弟との年齢差もかなり違うし、夢でも見てるんじゃないかって思った。残念な事に夢じゃなかったけど。

最初はあまりにも意味不明すぎて病んでた。冗談とか大袈裟じゃなくて。本当に死んじゃおうか、なんて思ってたし。でもそんなわたしを救ってくれたのが従姉妹や幼なじみをはじめとする周りにいた人達だった。その人達のお陰でこの腑に落ちない状況をどうにか受け入れて生きていこうと決めたのに、裏切られた気がした。


「何で…」


だってここがイナズマイレブンの世界だとすれば従姉妹も幼なじみも前の学校の人達も今の学校の人達もその他大勢の人達も、みんなみんなアニメのキャラクターなのだ。むしろ見知った顔の殆どはわたしのイナズマイレブンの知識にあった。

みんなはわたしと同じ人間じゃなくて、作られたキャラクター。


「何で、今になって、思い出したの?」


知らないままの方がまだ幸せだったと思う。





 



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