奈々ママに見送られて家を出てから歩くこと5分。今まで無言でただひたすら歩いていたツナが口を開いた。
「ちゃんと道覚えろよ」
「わかってるわかってる」
なんだよツンかよ!期待して損した。
とりあえず了承の意を示したがもちろん覚える気は無い。これからの登下校もツナと一緒だったら問題無いもんね!とかなんとか心の中で考えていたら超睨まれた。何この子、読心術でも使えるの?……いや、ツナの場合は超直感だってリボーンが言ってた!不穏な雰囲気を感じ取ったのか。超直感恐るべし…!
「すみません、まじすみません」
「…何謝ってんの?」
視線があまりにも怖かったので謝ってみたら呆れられました。でも表情が柔らかくなったし結果オーライ!…と思ったがどうやら学校に近くなってきたからダメツナのフリをしているらしい。気づけばわたしたちの周りは登校途中であろう並中生でいっぱいだった。
「琴玻、もう着くけどちゃんと道覚えた?」
「………えへ!」
「…………」
ジト目で睨まれました!うん、そんな目でわたしを見るのはやめてほしいな。わたしが悪いことしたみたいで居心地が悪いじゃん。今、みたいじゃなくてしてるって思ったやつ後で体育館裏に来るように。わたしは体育館の場所知らないけど。
「やっぱ前の学校よりは小さいかー」
「これよりデカいってどれだけデカいんだよ…!」
並中の校舎を見て呟いた言葉を拾ったらしいツナに驚かれてしまった。並中も公立の学校にしては大きい部類に入るのだろうけど、わたしのいた学校にはどうやったって勝てない。だってあの学校、寄付金をふんだんに使いました!って感じだったし。無駄に広いせいでたくさん迷子になって何回も授業に遅れたのはいい思い出です。
転校する時って普通は生徒玄関じゃなくて職員玄関から入るんじゃない?よくわかんないけどとりあえずツナと一緒に生徒玄関から入って新品の上履きに履き替え、転校って何気に初めてだなぁと感慨にふけっていたらツナに腕を掴まれた。腕は鍛えてるから贅肉はついてない……はず!ついてたら恥ずかしくて死ねる。
「職員室はここを真っ直ぐだから」
ドキドキしてるわたしを尻目にびしっと目の前にある廊下を指差してそう言い放った。これってまさかの一人フラグですかそうですか。
「…ツナはついて来てくれないの?」
「なるべく学校では目立つ事はしたくないから無理」
「…………うん、そうだよね、そう言うと思ったよ」
ツナが小声で本音を言ったことでフラグクラッシュが失敗に終わったことを悟った。そうだよね、目立てば目立つほどダメツナの演技がバレる可能性が高くなるもんね。
だがしかし、登校の時点でかなり注目の的になってた気がしなくもないんだ。ダメツナが女子と歩いてるとかありえねぇ的な話し声が至る所から聞こえてた気がするんだけど。……まぁ、今ここでそれを言ったところでツナが職員室までついてきてくれるわけじゃないから言及しないけどね。
「じゃあ後でね!」
「うん、また後で」
教室へ向かったであろうツナの背を見送り、自分も職員室があるであろう方向へと向かった。
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