「…つーか今更なんだけどさ」


一段落着いたからなのかリボーンは寝ちゃってて、奈々ママにわたしの事を言いに行こうと立ち上がったツナが思い出したようにそう言った。


「オレら、おまえの事何も知らないんだけど」
「あ…!」


言われてみればそうだ。わたしはツナたちの存在を漫画やアニメという媒介を通して知ってたけど、ツナたちはわたしの事を知ってるはずがないんだ。もしかしなくてもわたし名前すら言ってないんじゃないだろうか。まあ、ぶっちゃけ自己紹介なんてできるような状況じゃなかったけどね。


「じゃあ遅くなったけど自己紹介するね。名前は梦原琴玻。趣味はお菓子づくりで料理は人並み、特技は射撃の中学2年生です」
「……ホントに料理できんの?」
「失礼な!それくらいできるし!」


信じられないというような表情でこちらを見てくるツナにここぞとばかりに自慢するが少なくともクラスでは一番上手だったんだよ!……まぁ、それはクラスメイトが壊滅的な料理の腕前を持っていたからなんだけどね。


「料理はさておき、オレは母さんに言ってくるから大人しくしてろよ」


そう言って部屋から出て行こうとしたツナを今度こそ見送るはずだったのだが、急にひとつの疑問が浮上してきた。え?これ今聞かなきゃダメなの?空気読めよ自分。でも今聞かなきゃ忘れそうだしな…………よし、頑張れ自分!


「ねえねえ、ツナってダメツナの振りしてるって言ってたじゃん?」
「ああ」
「京子ちゃんっているよね?」
「…?!…、……あぁ、そうか。笹川のことも知ってんのか」
「うん。で、その笹川さんちの京子ちゃんのこと好きなのも演技?」
「……それって今聞く事か?」


完全に呆れた顔でこっちを見てくるツナに反論できない。やっぱり後で聞くべきだったか、と反省する。
でもわたしは気になったことをそのままにしておけない性分なんだ…!なんて損な性分なんだろうと自分でも思う。しかし!聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と言うくらいだからわたしの行動は間違ってない!……はず!


「たしかに今聞く事じゃなかったかもしれないと思ってるけど聞いちゃったんだから仕方ないじゃん。さあ、答えた答えた!」


こういう時はとりあえずごり押ししておけば大抵の人は答えてくれるというのを今までの人生で学んでいるわたしは、ツナに対してもごり押しを敢行した。
例に洩れずツナも少し言葉を詰まらせてから口を開いた。最低?何とでも言いたまえ!


「……まぁ、一応演技だな」
「え、お、おおおお!」


スレツナ設定でよくある展開キタコレ!まじで?!わたしのテンションの上がり具合にツナが若干引いてる気がしなくもないが今はそんな事どうでもいい。気にしてられるか。そう、それだけの一大事!


「じゃ、じゃあわたしと付き合って下さい!」


気づいたら口を出ていた言葉、一世一代の告白である。………じゃなくて!ちょっと待て、なぜ告白したし。何で今の流れで告白したんだ自分。超展開にもほどがあるぞ。現状が一大事じゃなくてわたしの頭が一大事か!10秒くらい前の自分を殴り飛ばしたい。


「ムリ」
「ですよねー!」


そりゃあな!ここでオーケー出されたらそれこそ超展開、ツナ電波疑惑浮上だよ!フラれたのになぜか悲しみじゃなくて羞恥で泣きそうなんだが。何かおかしい…!告白ってなんかこう、もっとさぁ…違う感じじゃない?


「琴玻、オレは演技とは言ったけど好きとも嫌いとも言ってない。実際好きとまではいかないけど笹川には惹かれるところもあるし、何よりついさっき知り合ったばっかのお前と付き合うわけないだろバカ」
「か、返す言葉もございません……」
「だろうな」


恥ずかしすぎてツナの顔が見れない。告白したこととかあっさりフラれたことが恥ずかしいわけじゃなくて、自分の馬鹿さを露呈したことが恥ずかしい…!


「……でも、でもさ!まだ京子ちゃんのこと好きじゃないならこれからチャンスがあるって事だよね?」


未だに頭がパンクしているのか、口からは意味のわからない言葉がスラスラと飛び出していく。恥の上塗りってこういうことを言うんだね!泣きそう。


「さぁな」
「!!」


クスリと微かに笑う声が聞こえたので、つられてツナを見てみるとわたしの馬鹿な発言に対しニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。こ、この胸の高鳴り……これが噂に聞く胸キュンなのか?!


「ツナのこと、いつか絶対振り向かせてやるんだから!」


今日のわたしは色々な事がありすぎたせいかおかしくなっているらしい。いや、おかしくなっていることにした方が身のためだ。普通の状態じゃこんな行動できるはずがない。今のセリフ少女漫画で見たことあるんだけど。
客観的に状況を把握してるわけだが、自分が恥ずかしがっているのが手に取るようにわかる。1分後くらいにはのたうち回って自己嫌悪してそう。


「せいぜい頑張れば?」


ツナはそう言ってこちらを見ずに手をひらひらと振って部屋を出ていった。……顔を見られなくてよかった。今すごく変な顔してる。主に羞恥で。………ちょっと落ち着け自分。





火蓋は切って落とされた(ぐぉー!死にたい!消え去りたい!恥ずかしすぎる!)(どうにか、どうにかツナの記憶からさっきのやり取りを消せないものか…!)




*

  



[]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -