「うー、さむっ」


そう言ったわたしの口からでた息は白かった。そりゃあ冬なんだから寒くて当たり前じゃないか。自分の格好すごく寒い気がする。ていうか寒い。

寒さに耐えて歩いていくと見えてきたのは例のトンネル。
やっぱり彼方についてきてもらえばよかった、と今になって思いはじめる。ああは言ったもののやっぱり夜のトンネルは怖い。
しかもお化けトンネルは名前の通りお化けがでることで有名だし歩道は狭くて電気は消えかけだし………とにかくいろんな理由で通りたくないトンネルなのだ。

そしてわたしは性格に似合わず怖いものが嫌いだから困った。ほら、わたしってばデリケートだから。あ、ごめんなさい石投げないで!
彩なんかあのかわいらしい外見からは考えられないような大のホラー好きで、何回ホラー映画を見せられたことか………駄目だ思い出したら余計寒くなってきた。寒さからか怖さからかわからないけど震える体を抱き締めた。

なんとか気を紛らわせることはできないだろうかと面白い事を考えている時、ふと足元に目がいった。

この辺りは世間では高級住宅地と言われている地域で街灯とかの設備も充実している。
それがどうした自慢かと言われそうだが別に自慢したいわけじゃない。注目すべきは街灯だ。もちろんこのトンネルの前も例外ではなく街灯がピカピカと光っている。そしてわたしが確認できる影はふたつ。ひとつはなかなかトンネルに入ろうとしないわたしのもの。もうひとつはだれの?

普通ならわたしなんて追い抜くでしょ。自分で言うのもあれだけど、さっきからブツブツ独り言を言いながら同じ場所で右往左往してる超不信人物だよ?

試しに一歩進んでみるとその影の持ち主も一歩進んだ。
…あっれー?これやばくない?いや、さっきから人がついて来てるような気はしてたけどまさか自分に限ってこんな事はないだろうと思ってたんだよ。でもまぁ今は無差別が流行りらしいしこれは逃げるべきですよねわかります。
いちにのさんでダッシュしてトンネルに逃げ込もう。あれ?こういう時って暗いところに行ったら駄目なんだっけ?いいよいざとなったら叫ぶよ。トンネル抜けたら交番あるし、って事でいちにのさん!

意を決してトンネルに一歩足を踏み入れた。


「う、わぁっ?!」


トンネルに入った瞬間に景色が揺れた。なんで?え?マジで??意識はしっかりしてるけどもこんな視界じゃまともに立っていられない。そうこうしてる間に身体はぐらりと傾き、受け身をとろうにも体が言うことを聞いてくれない。駄目だ倒れる…!




 





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