アゲモノ | ナノ

 奏多様 フリリク(シンジャ)


「あー飲んだ飲んだ!」


少し小声でそう呟くのはシンドバッド。
彼は今、王宮の廊下にいた。

いつものように彼は酒の飲みたさに負け、たくさんの仕事をほっぽって町に飲みに行ったのだ。
ジャーファルに見つかるとややこしいので、とびきり用心に王宮を抜け出した。
抜け出すのはたやすく、夜遅くまで飲みあかし、また用心に王宮に戻ってきた、今まさにそれである。

シンドバッドは自室の前につく。彼のお付きはちょうどいなかった。シンドバッドはそれをいいことにそろりと自室に入った。


「なっ…!」


そこには無惨にもバラバラに落ちた書類と、


「ジャーファルっ!?」


元々白い肌をさらに青白くさせ、倒れているジャーファルがいた。





If I had done as you advised me,
の言うりにしていたら、






「過労、ですね」


厳しい顔をしてシンドバッドを見つめるヤムライハが、シンドバッドに告げる。


「……過労か」

「…はい。王よ、ジャーファルさんばかりに仕事を押し付けてはいませんでしたか?」

「っそんなことは、」

「ここ最近よく夜に王宮から抜け出していますよね。たくさんの仕事を残したまま」

「…」

「それ、ジャーファルさん気付いてたんですよ。なのに、何も言わずに仕事を片付けて。だからジャーファルさんは過労で倒れたんですよ。」


シンドバッドは目を見開いてベッドで眠るジャーファルを見つめた。

昨日、倒れているジャーファルをみつけて、すぐにヤムライハを呼んだ。
検査をして、結果を伝えるためにシンドバッドはヤムライハの部屋に呼ばれた。


(ジャーファル……)


薬を打ったので、すやすやと眠るジャーファル。
自分のためにこんなにも尽くしてくれ、仕事もこなしてくれる政務官なんて、ジャーファルの他にいるのだろうか。


「今日はジャーファルさんは休んだ方がいいでしょう。」

「…ああ」

「王よ。ちゃんと自分の仕事は自分でやってくださいね」

「…わかっている。すべてジャーファルに押し付けた俺が悪いことなんて」


「すまない、ジャーファル、」とシンドバッドはジャーファルに近づき頬をなでた。
ヤムライハは2人にすべきだと思い、部屋を後にした。







「ジャーファル、」


頬をなでるとぴくぴくと瞼が動く。
まだ寝ているらしいが、くすぐったそうにジャーファルは身をよじる。


「…こんなになるまでお前を働かせるなんて、、俺は最低だな…」


王宮を抜け出してはジャーファルが仕事をすませておいてくれた。もちろん怒られるが、自分はジャーファルの優しさに甘えていたんだと思う。


『シン、一人で王宮からでるなんて危ないじゃないですか!シンが抜け出すと私の仕事が増えるんですからね。まったく。』


(あのときの言葉を受け止めていたら、)


ジャーファルは過労でなんて倒れなくてよかったのではないか。
自分がなんでもジャーファルに押し付けるから、ジャーファルは倒れてしまったんだ。

シンドバッドはそんなことを考えなから、「ジャーファル、ごめんな、」とずって呟いていた。







「ん………」


深夜、ジャーファルはゆっくりと瞳を開いた。

ベッドが異様に広い。部屋の装飾も自分の部屋とは比べ物にならない。
どうやらシンドバッドの部屋にいるようだ。


(なんでシンの部屋に、)


ジャーファルは思い出した。昨日、またシンドバッドが王宮を抜け出し、シンドバッドの仕事を片付けていた自分を。


(あの時、仕事を片付けていたら突然、)


目眩がして、自分はそのまま……


「!!!!」


ジャーファルはガバッとベッドから飛び起きた。


「!ジャーファル、起きたのか?」

「!シン?」


声がしたので振り替えると、そこには大量の仕事を片付けているシンドバッドがいた。


「シン、何故私はシンの部屋に、」

「ああ、それはな、」


シンドバッドは椅子から立ち上がると、ジャーファルがいるベッドに近づき、ベッドに腰かけた。


「お前、倒れたんだよ」

「な、」

「過労、だそうだ」

「………」


シンドバッドは微笑んでいた。しかし、顔を少しうつむかせ、申し訳なさそうにもしていた。


「お前が過労なんかで倒れたのは全て俺の責任だ。」

「シン、」

「お前にこんなになるまで仕事をさせるなんて、最低だと、」

「シン!」


ジャーファルはシンドバッドの言葉を遮る。シンドバッドは驚いてジャーファルの方を見ると、ガバッと急に抱きつかれた。


「!!ジャー、」

「シンだけが悪くなんかありませんよ!そりゃあ仕事を残して酒を飲みに行くのは悪いですが!終業しているのに仕事をする私にも責任があります!」

「ジャーファル…」

「…だからそんか情けない顔しないでくださいよ…いつものように私に笑ってください…」


自分にすがるように抱きつくジャーファル。しかもいつもだったらありえないように、自分に甘えてくるではないか。
シンドバッドは理性を押さえつつ、ジャーファルの言うように、笑いかけた。


「ははは!お前が甘えるなんて珍しいもんだな!」

「なっ…!」

「だから王様、ジャーファルくんにキスしたくなったんだが」

「!!」


ずい、とジャーファルに顔を近づければ、ジャーファルはぼっと音が出そうなくらいに顔を真っ赤にさせた。


「ちょ、シン!」

「いいだろ?たまには。最近仕事が多くてこういうこともできていないじゃないか。」

「誰のせいだ!!」


ジャーファルはそういうと急に覚悟を決めたような顔になった。


「ジャーファ…!」


シンドバッドがそう呼ぼうとしたら、遮られた。ジャーファルの口で。
ジャーファルはシンドバッドに、触れるだけのキスをして、すぐに離す。


「え?え?ジャーファルくん?」

「っ、もう、ちゃんと仕事はこなしてくださいね!!」


シンドバッドは、そう顔を真っ赤にさせて言うジャーファルに、今度は自分から深い深いキスをしたのであった。







If I had done as you advised me,
の言うりにしていたら、

(君は倒れなかっただろうな)
(しかし、)
(こんな可愛い君も見られなかったな)






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奏多様リクエストで、「シンの溜めた仕事を片付ける為、過労で倒れたジャーファル微シリアス→甘」でした!
リクエストにそっているかわかりませんが、精一杯頑張りました!

リクエストありがとうございました!
これからも青空と小鳥とをよろしくお願いしますー!




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