19.悪魔と狼地下から地響きが聞こえ、エルザがリルに勝利する少し前。
「しろ…お前何で悪魔何かに手をかしてんだよ」
城内地下階段近くにいるジローとしろこと一茶は戦いもせずに、ただ見つめあっていた。
「何してるかって?そりゃあセナちゃんを殺すためだよ。」
何故狼族が悪魔に手を貸しているのか。
それが不思議でならなかった。
「!!……お前、その腕輪(リング)どうした?」
ジローが気づいた事は二つ。
一つ目は一茶の様子がおかしいこと。
二つ目は一茶の腕に"操りの腕輪"がついていた事だ。
「腕輪?似合ってるか?」
シャラシャラと自分で腕輪を鳴らす一茶。
「……なーんだ、そう言うことか」
ジローは鼻で笑うと、一茶を見ながらギィに告げる。
「ギィ、ファーストモード」
「なるほど…だからあの狼野郎(一茶)はあっちの見方ってことか」
ギィはニヤリとジローに笑いかけながらファーストモード――銃の形に変身する。
「お、戦うき満々じゃん」
相変わらずへらへらとした口調で喋り続ける一茶。
ジローはニヤリと笑い、一茶のほうに銃を構えた。
「夢の中から目ぇさまさせてやる」
++++++++++++++
「ここでもねぇっ…!!」
息を切らせ、汗だくになりながらドアを蹴り破るのはグレイ。
地下のドアを全て蹴り破ったのに、セナの姿は見当たらなかった。
「くそっ…!」
グレイがドンっと壁を殴り付けると
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「っ!?何だっ!?」
その部屋だけで小規模の地響きが起こった。
置いてあったテーブルや椅子わぐらぐら揺れて、タンスも倒れ……
「!?」
タンスが倒れて表になったのは、壁ではなく、装飾の施してあるトビラ。
グレイはそのトビラの前に行き、はぁーっと深呼吸してトビラに手をかけた。
「まってろよ…セナ!!」
++++++++++++
「うぉりゃぁ!!」
一茶の腕輪に集中攻撃するジロー。
それを一茶は軽々とかわしていく。
「あれ?魔界のオウジサマだよね?ジロー」
へらへらと笑って挑発する一茶を、ジローは余裕のな顔で見返す。
「お前のために、"手加減"してやってんだけど?」
たしかに、ジローは手加減してやっている。
本気を出せば一茶にでも勝てるのだか、今は一茶は操られている。
しかも、仲間にむやみやたらに攻撃はできない。
「!…ふぅん。じゃあこっちは本気出そうかな?」
ブァァァ
一茶の周りに煙がたちこめる。セナやジローが悪魔に変身するのと同じように。
「……」
「…狼ってさぁ、悪魔も殺るんだよ?」
……腕輪を壊すには今しかない。
一茶が俺に近づいてきている今しかない。
ジローは銃のピントを一茶に合わせると、引き金を引いた。
「いたたくぜっ!!お前の"意思"を!!」
バァァン
「……しろ」
ジローは戻ってきた白い物体を片手で掴みながら、パタリと倒れている一茶を見る。
腕輪は壊れている。一茶は周りをキョロキョロとしていたが、口を開いた。
「ジロー…ここ、何処?」
きょとんとしている一茶に、ジローは呆れ顔で言った。
「まったく…世話がかかるなぁ。お前」
城内地下階段での戦い
紅次郎、一茶共に戦意消失
二十章へ
prev|next