10.自分に’嘘’だけは「……」
「……」
ペネレの村の宿の中。
あれからナツがセナとグレイを見つけ、連れ帰って来たのだ。
「お前らあんなとこで何してたんだよ!!心配したんだぞ!!」
ナツは二人を怒鳴りつける。
だが、いつもだったら何かいちゃもんつけてくるグレイが、黙ってナツの話を聞いていた。
「っ……」
「…俺が悪かった。心配かけてすまねぇ…」
ナツは「お、おぅ…」と言ってチラリとセナを見る。
「……何?」
「いっいやぁ!!なんでもねぇ!!……ただ」
ナツがいつになく真剣に
「お前らちょっと変だから、なんかあったかな〜っと思って。」
「「!」」
"変"
そりゃ変になる。
セナとグレイはお互いの"秘密"を知ってしまったのだから。
「……」
「……」
余計暗くなる二人をため息混じりに見るナツは、「んじゃ、ギルドに戻るか?」と言う。
「…そうだな」
「…うん」
「もう!!なんで二人共そんなに暗いのよ!!」
「まあまあ、ルーシィ」
そんな三人を大変そうにナツはギルドに連れて帰った。
++++++++++
「……」
「……」
「なぁ、やっぱあの二人、なんかあったんだよな!?」
ギルドに帰って来て早々、いつもなら隣同士で座って仲良く話しているであろうセナとグレイの話題で、ナツは詰め寄られていた。
「だから知らねーって!!」
「知らねーわけねーだろー!?答えろ!!」
ナツはついに押さえていたもの切れたかのように机をバン!!と叩いて立ち上がる。
「知るかんなもん!!そんなに気になるなら自分で聞けばいいだろうが!!」
『ナツがキレた〜!!!!』
ギャーギャーいってケンカしだすナツ達を横目に、カウンターから飲み物をもってミラジェーンがセナの所へやってくる。
「何か飲む?」
「!」
いきなり声がしたのでセナは横を見る。
「…ミラさん」
「横、いいかしら?」
セナは小さくコクンとうなずく。
ミラはニコリと笑ってセナの横に座った。
「……」
「何かあったの?グレイと。」
セナはチラリとグレイを見る。
「…まあ、話したくないなら話さなくてもいいわ。」
グレイは机に肘をついて一人で何かを考えていた。
「…すみません…今はまだ…」
「うん。わかった。でもね、」
ミラは席を立つと、カウンターに戻りながらセナに告げた。
「自分に"嘘"だけはつかないでね?」
「……?」
「ミラちゃーん!!酒ー!!」
ミラは「はーい」と返事をするとカウンターに戻っていった。
「……(自分に嘘?どうゆう意味かしら)」
セナはミラを見て顔をしかめた。
「だーっ!!もうウゼー!!」
「落ちつけ!!ナツ!!」
「ミラちゃん!!早く!!」
「はいはーい!!」
ガシャッバキッボカッパリーン
ギルドはいつもどおりで、騒がしかった。
ボカッ!!
「あ……」
ナツが投げたコップがグレイの頭に当たる。
机の上で考え事をしていたグレイは、いきなり頭に激痛が走ったため、飛んできた方を睨み付ける。
ギルドは一気にしんとなった。
「……」
「わ、悪かった!!俺が謝る!!ごめんなさい!!」
鬼のようなグレイの形相に、ナツはテンパる。
グレイはプイッと顔をそらし、また机に肘をついて考え事をしだした。
「…ゆ、許してくれたのか?」
「…そーなんじゃね?!」
ナツ達はヒソヒソ話す。
「なあセナ。どうすんだよ。あいつ(グレイ)のこと。」
机の上に出ていたペルは、セナに問いかけた。
あれからセナはナツにギルドに連れて帰られ、グレイともまともに話していない。
「……まだ、まだグレイをこ…」
「なーにしんみりしてんだよ」
突然セナの背後から声がした。
「?」
ナツ達も、ルーシィも、ミラもそしてグレイもセナを見る。
なんだか懐かしくて聞き覚えのある声。
セナは後ろを振り向く。
そこには…
「ジ…ジロー…?」
十一章へ
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