episode2 何故覚えてるんだろう
「…ふうん、皆高尾のこと忘れてんのか」
公園のベンチで、平然とした顔付きで青峰は言った。
青峰が高尾のことを覚えていると言うのでこれまでのことを全部話した。青峰は驚くこともなく、ただ平然と聞いていた。その神経が羨ましいのだよ。
「…信じるのか?」
「信じるもなにも、お前のリアクション見れば嘘かホントかなんてすぐわかるっつーの」
「…そうか」
青峰はそういうと、はぁ、と溜め息をついた。そして目を閉じて、呟いた。
「緑間は、高尾のこと覚えてんだろ?」
「…ああ」
「なら、なんで皆忘れてんのかな」
「それは俺が聞きたいのだよ」
それより、何故青峰が高尾のことを覚えているかだ。俺は一応高尾と付き合っていた訳だし、高尾のことを思っていて当たり前だ。だが何故、恋人でもクラスメイトでもない青峰が、高尾のことを覚えて…
「っ、まさかっ!」
「あ?」
「青峰、お前、高尾のことが好きなのかっ!?」
「はっ!?ちょ、なんの話だよ!?好きじゃねーし!」
「じゃあ、何故覚えているのだよ!」
「知らねぇよ!こっちが聞きてぇよ!」
青峰はまた溜め息をつくと、何か意味深な顔をした。
「…どうしたのだよ」
「いや…お前が高尾のことを覚えてるのは、それだけお前が高尾のことを思っていたってことじゃねーのか?」
「それを今考えていたのだよ」
「あー、だから俺に聞いたのか?高尾のこと好きなのかって」
「ああ」
「…俺は別に高尾のことそんな目で見てねぇし。だけど…」
「……?」
青峰は急に黙り混んだ。
じっと下を向いて、何かを考えているような、そんな表情をしていた。
「……どうしたのだよ、急に黙り混んで」
「……なんでもねぇ、忘れてくれ」
「え、」
「そんなことより、皆が高尾のことなんで忘れてんのか、原因を突き止めるのが先だろ?」
「…そうだな」
もう薄暗くなった空を見上げて、俺は小さな溜め息をついた。