prologue




「真ちゃん!誕生日おめでとう!大好き愛してるっ」


高校1年の夏、7月7日、七夕。

そう言って抱きついてくるヤツーー高尾和成は、0時に電話までかけてきたくせに朝俺の家まで迎えにきた時にまで俺の誕生日を祝うのだ。
そう。7月7日は俺、緑間真太郎の誕生日。


「やっ、やめろっ!抱きつくな暑い!」

「やだなもー照れちゃって!」

「照れてないのだよっ!」


俺は必死に高尾を引き剥がそうとするが中々剥がれない。ましては、逆に抱きつく力を強めてくる。普段の高尾なら俺が引き剥がそうとすれば文句を言いながらだが離れる。だが、今日の高尾はどこか様子がおかしかった。


「…高尾?」

「…なぁ真ちゃん。俺、真ちゃんのこと大好きだからな」

「なっ、なにを唐突に…」

「だからさ真ちゃん、俺のこと、忘れないでね……?」

「な、にを言っているのだよ、転校でもするのか」

「冗談だって!俺転校とかしたら真ちゃん不足で死んじゃうし!」

「っ、バカ目…」


冗談混じりに話す高尾。俺はさっきの違和感は気のせいだと思い、ホッとため息をついた。

本当にあのときの俺は馬鹿だったと思う。
あのとき異変に気づいておきながら、気づかぬふりをしていた自分に。

俺達はチャリアカーに乗り込み、学校へ向かった。


授業も、部活も、放課後も。いつもと同じようにすごした。必要以上に誕生日を祝ってきたが、それは別に気にもしなかった。


ただ、違ったのは別れ際。

俺の家の前まで来て、じゃあな、と言おうと思ったのもつかの間、ぐいっと服を引っ張られて唐突にキスをされた。
訳もわからず高尾を見ると、にこっと笑いそのまま背を向ける。


「………高、尾」

「ばいばい、真ちゃん」


振りかえることなく、高尾は帰っていった。





高校1年の夏、7月7日。

その日から高尾の姿を見ることはなかった。





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