◆女子高校生→間桐雁夜→油女シノ

◆運命知識無し/鳴門知識微かに有り(ほぼ忘れた)
◆捏造いっぱい
◆見た目→白髪、濁った左目、左半身にケロイド状の痕
◆左目→視力はほぼ無い。代わりにチャクラや生命エネルギーが見える。
◆体→普通に動かせる。前世より身体能力が向上した。
◆所持能力→膨大なチャクラ。吸収。前世含む蟲の使役。
◆備考→臓現は嫌いだけど、蟲は案外嫌いじゃない。流石にtnkの形は改造して廃棄。小さい子供好き。とりあえず今の両親に親孝行したい。

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◆運命編

バーサーカー。俺のサーヴァント。
負けた。セイバーに。負けてしまった。
消えた。俺との繋がりが。
遠目に見えた、最期のあいつは、どことなく寂しげで、満足げで、悲しそうで嬉しそうだった。
いいなぁ。よかったなぁ。死んだその後にでも、願いが叶って。もう二度と会えないはずの、焦がれた人に会えて。

時臣は死んだ。死んでいた。教会で。最後にもう一度だけ、話したかったのに。
桜ちゃんを、せめて気にかけてやってくれと。俺の体はもう長くないから、そうしたら、桜ちゃんを見守ってほしいと。それだけでいいからと。でも駄目だった。手遅れだった。時臣は、死んだ。

負けられない戦いだった。時臣が死んで、更に負けられなくなった。
葵さんも凛ちゃんも、遠坂の家を継ぐにはまだ足りないから。俺が。俺が勝って、桜ちゃんを二人に返して、それで、微力でも遠坂を継ぐ手伝いをしなくちゃ、なんて。
大嫌いな魔術だったけど、蟲蔵の合間を縫って、多少は勉強してたんだよ?少しでも勝てる確率が上がるように。

でも、勝たなきゃいけなかったのに、負けてしまった。
このままじゃあ桜ちゃんを助けられない。

……じゃあ、最後の仕事をしようか。




「おじ、さん…?」
「やぁ、桜ちゃん。お願いがあるんだ」
夜遅くに悪いけどね、このバッグを持って、今すぐタクシーに乗ってほしいんだ。
「え…、」
「葵さんの実家の場所は分かるよね?禅条家に行って、この手紙を葵さんに渡してくれ」
今すぐ、今すぐ行くんだ。

ぐいぐいと、外に押し出される。門前には既にタクシーが待機していて、何かを言う間も無く押し込まれた。
「っ、おじさん!どうしたの!?」
「運転手、禅条家に向かってくれ。…どうもしてないよ、桜ちゃん。これからおじさんは、此処で仕事をしなくちゃいけないんだ。危ないから、ちょっとだけ葵さんの所に行っておいで。ーーそれじゃあね、桜ちゃん」
「おじさっ…」
「出してくれ」

あっという間に走り去るタクシー。祈るようにその行方を見つめて、屋敷へと踵を返す。



「……あぁ、いたいた。やぁ父さん」
「雁夜か。小娘も鶴夜も外へ遣って、何がしたい?」
「そりゃあ勿論、大掃除さ。戦争負けちゃったからね、これしかないと思って」
「そんな満身創痍の体でか?また異な事を。大体、貴様がこの儂に勝てるとでも?」
「やってみなきゃ分からないよ、亡霊」
「こそこそ書斎に行くから何かと思えば……気づいたか。思ったほど愚かという訳でもなかったようじゃな。意外意外。じゃがこの儂に勝てるなどと思い上がっておるのだから、やはり愚か者か」
「どうとでも言えばいいさ」
細い、細い魔力の錐で穴を穿つ。間桐の屋敷、その地下を巡る霊脈へ。気付かれないように少しづつ、一年かけてこじ開けてきた亀裂に、最後の一撃を。
昇る、昇る、魔力の奔流。魔力を水と見立てればほら。吸収して、吸収して、吸収して。
霊脈を通して、穿った穴を通して、体の奥底から湧き出る膨大で純粋な魔力に、造られた偽物の魔術回路が崩壊していく。耐えられないと、体が悲鳴を上げる。それを無視して。もっともっと、もっと。吸収し続ければ、無理矢理新しい回路が作成されていく。その激痛を押し殺して、前を見据える。
蟲を配置して、生物を使った三次元の魔方陣。その束縛を解こうと動く臓現が見える。
あと少しだけ保たせておくれ、俺の蟲達。
吸収して、吸収して、圧縮して。左手の指の先が崩れていく。多過ぎる魔力に耐えられなくなったらしい。もうそろそろかな。
「じゃあね、父さん」
溜めに溜めた魔力を、一気に放出する。
溢れたそれが、まるで水のように、周囲を満たしていく。それは奇しくも、同時刻に聖杯から漏れる<この世の全ての悪(アンリ・マユ)>によく似ていた。

過ぎたる純粋は、須く害である。延命により穢れ、生きながらにして腐りゆく臓現の魂に、圧倒的な質量のしかも圧縮された純粋過ぎる魔力の塊は、猛毒よりもなお強い、致死性のモノであった。
魂が、消えていく。削られ、侵され、消滅していく。
周囲の蟲も、雁夜、臓現の区別なく、奔流に呑まれたモノから存在を失っていく。
消えていく、消えていく、消えていく。
間桐臓現、否、マキリ・ゾォルゲンの最期を、自身から吹き出た血の海の上で、間桐雁夜は見届けた。

あぁこれで、本当に最後だ。開けた穴を、塞ぐ。霊脈の亀裂を縫い止める。糸のように、吸収した霊脈自身の魔力で縫って、同化させる。
それでも余った魔力が、行き場を失くした魔力が、十重二十重に屋敷に張り巡らせた結界の中で暴れまわる。
全部、全部、呑み込んで。昇華させて。
左手と言わず、右手から、両の足の先から、体がその存在を崩していく。




夜が明けた時、その場所には、ただただ平な、草木の一本も無い開けた地面が晒されていた。其処にはなんの痕跡も無く、すわミステリーサークルかと後日テレビで少しの間騒がれ、やがて忘れ去られた。

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