最適化




ブンッ。

広大な庭の一角で、風切り音が空気を揺らす。

「っふ」

少し開けた其処で両手に持つ得物を振るうのは、スーツ姿の青年だ。

ブゥンッ!

年の頃は二十を少し過ぎたくらいだろうか。
鋭い瞳で空を睨み銀に閃く両のトンファーを振るう様は、其所に相手を幻視できそうなほどに正確で無慈悲だ。
時折その体の一部であったりトンファーであったりが鮮やかな炎に包まれるそれは、いっそ美しいとも言えるだろう。

一通り試して納得できたのか、暫くして動きを止めた青年が、周囲の警戒に出ていた黒いペットを呼ぶ。
「グルルル」
「ミケ、お座り」
言われた通り寝そべったその巨体に満足した青年――雲雀恭弥は、従順なペットを背もたれに、その場に腰を下ろした。



◆◆◆



朝方発現した、死ぬ気の炎とそっくりな念。
いや、死ぬ気の炎も念も結局は自分の生命エネルギーを変換して使う力なのだから、ある意味似たようなものなのだろうか。
まぁ、それは今は関係ない。使えるという純然たる事実があればいいのだ。
話が逸れた。

何が言いたいかというと、自分はこの死ぬ気の炎について考えを纏めたくて休憩を入れたんだ。さっさとチチオヤ咬み殺す為にも、自分の能力の把握は重要なんだし。

元々、念の発現にはイメージが重要だ。死ぬ気の炎のイメージにはリングを実際作って眺めるのが一番楽だと思ったから、大分前に実際作ってある。雲以外にもボンゴレ、ヴァリアー、マーレ、シモンの全属性のリングを揃えたんだ。
理由?なんとなく。
けれどそれが効を奏したのか、見事全属性の炎を使えるようになったよ。僕凄い。
色々実験したところ、利便性追求したら制約もそこそこ多くなった。多分。他人の制約の数とか知らないけど。

まず一つ目。
使いたい炎のリングを指に通しておく事。一度に使えるリングの数は合計八個まで。あとボンゴレの雲は絶対。
そして条件はリングの個数(大事なことなの(略))って所がネックで、なんとリングは重複できる。つまり、ボンゴレ、ヴァリアー、マーレのそれぞれ同じ属性のリングを付けておけば、その属性は三倍の威力を発揮するってこと。ナニコレ凄い。
でも数は八個まで、それと一度に扱える炎は五種までだから、組み合わせをよく考えなくちゃね。

二つ目。
どんなに小さくても良いから、定型句『属性・性質・効果』を声に出して言うこと。専らイタリア語で言うつもり。この世界には無い言語だから、対策は取りづらくなるはず。
『効果』っていうのは、単純に対象が自分かそれ以外かってこと。自分なら『Aggiunta(付加)』、相手とか場所とかなら『Ambito(範囲)』って言う必要がある。あと具体的にどうしたいかはイメージ。簡単だね。

三つ目。
炎使う時は強制絶状態。
あと他の念(記憶操作)が使えない。
これちょっと面倒でさ。絶状態ってことは防御力ゼロでしょ?だから必然的に雷の炎で強化しなきゃいけなくなる。
そうすると雷のリングは二つくらいは付けておきたいから、雲と合わせて常に三つは枠が埋まっちゃうわけだ。
組み合わせ、後でちゃんと考えておかなきゃ。


匣に関してはおいおい考えるとして、ひとまずこんな所だろうか。


「よし、ミケ。付き合いな」

さて、もう一死合い(仕合)しようか。



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イタリア語は翻訳サイトより。間違いがあったらごめんなさい。
念もよく解ってません←




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