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外は既に薄暗くなってきていて、木に絡めてある提灯が明るく光っている。
時折舞い散る桜の花びらが、ちらちらと光に照らされていた。
たくさんの屋台が立ち並び、大勢の人が楽しそうに練り歩く。

そこはお祭りのような独特の雰囲気を持っていて、漓凰の胸が高鳴った。

「蔵!早く行こ!」

「あぁ、ってはやっ!待ってや」






綿飴、リンゴ飴、焼き鳥、クレープ、etc……。
買って食べて幸せになって。
……………って。
「…はっ!違う!」

お花見と蔵のお祝いがメインであるはずなのに、なぜ自分の方が盛り上がっているんだろうか。



「まさに花より団子やな」
呆れたように隣にいる蔵が言う。

「…う゛ぐっ。言い返せない」


違う!屋台じゃなくて桜を見に来たんでしょ、漓凰!
しっかりしなさい!
自分に向かってそう心の中で呟いて。


「今から桜見に行くからいいでしょ!蔵に何かおごらなあかんから、その後ね!」
何ほしい?
そう尋ねれば、苦笑が返ってくる。

「女におごられたら男が廃るってもんやろ。格好悪いしな。気持ちだけもらっとくから、ほな行こや」


えー。
「でもこっちはおごるつもりで来たんやし、おごらないと私の気が済まないんやけどー」
ぶー。って効果音がつきそうなくらいには顔をしかめてみた。



一方で蔵はそんな私を見て今にもうーん。て言いそうな感じで何か考える。

「…せやったらおごる代わりに俺に付き合ってや」


少しの沈黙の後に言われたのはその言葉で、そんなのでいいのかなって思ったけど蔵はそれでいいって言う。

「うーん。本当におごるんじゃなくていいの?」
「ええって言っとるやろ。ほな行こや」
「…わかったー」


蔵はちょっと笑って片手をこちらに向けた。




「え、何?」

「……そんな反応されるとは思わんかった」


普通判るやろ。
そう言って蔵は私の手を握った。

…私の手を握った。

………!?


私が蔵の腕握ることはあっても、蔵が手を握ってくるって無かった気がする。
なんて珍しい。

そんなずれたことを考えながら、蔵に手を引かれるままに歩いていった。





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