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大浴場から上がると、無性に蕎麦が食べたくなった。
時刻は夜の11時。
さすがに食堂は開いていないだろう。
そう思いながらも食堂に行ってみれば、予想に反して厨房が明るかった。
覗いてみれば、オカマ…ジェリーがおれに気づいた。
「アラン?神田じゃない!帰ってきてたのね」
何をしている、という疑問は置いておいて、開いているのだからと、とりあえず注文をする。
「蕎麦」
「ん〜、こんな時間に?でも、そんな空気読まないところも大好きよ〜。ちょっと待っててねぇ。今科学班への差し入れ作っているところだから」
だから起きているのか。
一度ぶった切ってやりたいと思ったが、蕎麦を食べられなくなるのは御免なので舌打ちで怒りを収める。
「チッ」

蕎麦を食べている間も、オカマは勝手に喋り続ける。
なんでもアクマがあちこちで大量発生しているとかで、今はモヤシ、リナリー、兎しかエクソシストが教団にいないらしい。

「リオウちゃんもいなくてつまんないのよねぇ〜」
リオウもいないのか。
………

なぜあいつが出てくるんだ?
ふと湧き出た意味のわからない思いを振り払い、食べ終わった皿をジェリーに押し付けて食堂を出た。


「あれ?そういえば今日って……」
神田が出て行った後の食堂でジェリーが呟いた言葉は、誰にも届かない。


雨の音は未だ、轟いている。




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