然れど人は其を意識せぬ物だ
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案の定拒否権は無かったので、諦めて詳しい話を訊きだした。
エクソシストとは。イノセンスとは。村人を塵に変えたあの悼ましい化物は。

聞き終えた感想としては、また厄介事か、だ。
話を聞く限り、前世、前々世のように突拍子もない不可思議な世界。多少は慣れてしまった気がして嫌だが。ついでに言うと、聞いた話に所々デジャヴを感じるので、以前漫画か何かで見たのかもしれない。百年は前のことだから覚えてはいないが。
……そう考えると途端に自分が年寄りになった気がする。大丈夫、記憶だけで肉体も精神もまだ若い。はず。関ヶ原行く前に90歳超えたよ…これからも行かないけど。バサラ毛利元就の年齢ネタもう笑えない。

どんどん思考が明後日の方向に逸れるので、いい加減戻す。
一先ず我は、目の前の男の弟子という形になるらしい。イノセンスの扱いを身につけ、力をつけるまで。その後は黒の教団というこの組織の本部へ行き、そこの指示に従うそうだ。

…人の下に立ちたくないな、と思う。初めの人生では人の上に立ちたくないな、だったのに、変わるモノだ。その後の人生では二度とも、上に立ちこそすれ、下になって良かった試しがないからだろう。
気が乗らないので、自分のやりたいようにやるというのを目下の指針にしようと思う。組織に追われないだけの権力なりをつけて高飛びすることも視野に入れよう。……自分で言うのもなんだが、こんな七歳児嫌だ。


◆◆◆


さて、次はちょくちょく単語が出てくるイノセンスについてだ。我とイエーガーの見立てでは左腕に填まる環がそれではないかということだ。
気を失う前には無かったものであるし、妙に馴染む感覚がする。実際に試すのは後日であるが、代わりにイノセンスについてより詳しく話を聞くことになった。

胡散臭いな、というのが感想だ。

曖昧な部分が多すぎる。神とやらの干渉が不自然だ。その神とやらはいつどのように発生したのか。そもそもの始まりの原因は何なのか。
尋ねたところで分からないであろうし、宗教を信仰する輩にはそも、質問の意味すら理解できぬ者もいることは今までの経験から知っている。
故にこの手の疑問は、今下手に口に出すよりは後々自身で調べた方が良いだろう。

イエーガーの語る大筋は粗方理解した。なれば後は、本部やら支部やらに辿り着いてから探すべきだ。
これより先(不本意ではあるが)戦いの道を歩むならば、今この躰に必要なのは、時間による成長と、今まで怠った分の鍛錬である。
明日より少しずつ始めるとしよう。
イエーガーにはこの際、およそ子供らしくないこの思考回路と身体能力をさっさと理解させ、要らぬ干渉は避ける方向で行くとするか。


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