侵入者
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慌てたように城内を走る部下達。
非常時故、仕方ないかと騒音に眉をひそめるに留めた。



「元就様!!」

歩を進めながらも城や城下町の被害報告を聞く元就に、一際大きな声がかかる。

「何ぞ。そう叫ばずとも聞こえておる」
「申し訳ございません!しかし、それが元就様、」
いきなり、見たこともない獣が現れたのです。


「何?」

一度他の報告を止めさせ、知らせを持ち込んだ部下に向き直る。

「中庭の警備に当たっていた者の話では、地震の直後、突然空から降ってきたのだと。外見は白い毛並みの犬の様で角のようなものがある見たこともない獣で、捕縛しようとしたところ、得体の知れない黒い物体を出し反撃してきたそうです」

「その獣は今はどうしている」

「包囲し、手は出さずに警戒しています。獣の方も動く様子はないと」

見たこともない獣。
空から降ってきたという。
得体の知れない攻撃。
脅威になる可能性があるのならば、確かめなければ。



「我が行く。案内をせよ」


他の者を戻らせ、ふと長曾我部がいたことを思い出す。
「長曾我部、貴様も来い。城をうろつかれても迷惑だ」


それに、いざとなれば盾にすれば良い←


◆◆◆


案内のもと、着いた先には盾を構えた駒共の群れ、の背中。
妙な図だ。

その奥には確かに、真白い毛並みが見えた。


「道を開けよ」


そう声をかければ人の壁が目の前で二つに分かれていく。
なんか壮観。

さて、と。例のモノは…。


そこで思考が止まる。
しかしどんな時でも変わらないこの鉄面皮はやはり無表情を貫き通す。
たとえ内心で驚愕していたとしても。




…………え。
なんでここにいんの。



思わず前世の口調が出るくらいには驚愕している。
だが表情は動かない。
無言を貫く。
我のポーカーフェイスに万歳。


長く白い毛並みに鋭い爪と尾は藍色。
顔色も同色で目は鋭く赤い。
何よりも、その右の頭部から生える、婉曲した鎌のような角。

それは。

前世で人気の高かった遊戯。
其処で幾度か見かけた姿。


「…貴様は……」

アブ、ソル…?


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