異変
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それは、唐突に始まったのだ。


◆◆◆


ドタドタと、騒がしい声が耳に届き、城の主は嘆息する。

「元就様」
「入れ」

障子の向こうから聞こえる声に応え、元就は紙面から顔を上げた。

「失礼致します。長曾我部様がおいでになりました」
「…城に入れるなと申したはずだが」
「制止も聞かずに入ってしまわれて…」

部下のその言葉に、元就はもう一度息を吐き出す。
「もう良い。貴様はこの書類を持って下がれ」
「はっ」


最近になって休戦の声明と同盟を結んでからというもの、何故かあの鬼はことあるごとに城に押し掛けて来るようになったのだ。
今もまた、筆と硯を片付ける間にも足音は近づいてくる。
元就は静かに部屋の隅にある采配を手に取った。


「邪魔するぜー!も「散れ」ぅ゛グハッ」
「許可も無く戸を開けるな、躾のなっておらぬ鬼めが。大体貴様の入城は許可しておらぬわ」

振りかぶった采配は見事襖を開けた元親の顔面に的中し、元親が顔を押さえて呻く。

「いきなり何すんだよぉ……」
「それは此方の台詞よ。貴様こそ礼儀の一つも知らずに唐突に来おって。一体此度は何用で来た。まさかまた用も無く来たのであれば…」
ふん、と小さく鼻で笑い。
そう言えば面白いように笑顔の長曾我部の顔から色が引いてゆく。

「まさか真に何の用も無く押し掛けて来たのか?ならば覚悟はできておろうな」
「ちょっ!?待て!待ってくれ毛利!!何処から出しやがったその輪刀!?」
「我が輪刀の錆となるが良いわ」
慌てる元親に元就が輪刀を降り下ろそうとした瞬間。



大地が、揺れた。




「な、なんだぁ!?」
「っ!?」



しかし、流石は一国を担う武将。
唐突な揺れに驚きはしたものの、瞬時に体勢を立て直す。

「外の様子を見る。着いてくるか、此処に残るか、好きにするがよい」

元就はそう言い捨て、元親の方もちらりとも見ず、輪刀を片手に足早に部屋を出た。

「待てよっ」
後ろから騒がしい足音と声が聞こえるが、当然止まるはずもない。



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ナリ様視点→長曾我部
地の文(視点無し)→元親


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