弐 今は昔
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私が目を覚ました時にいた女性はどうやら『今』の私の母親らしい。

茶色の髪に赤い目。
純和風な装いと家なのに違和感が無いのは、着なれている感がするからかもしれない。

父親は普通に黒髪、黒目。典型的な日本人だが、こちらも同じく純和風な装い。
つまるところ、着物。
おまけに刀。

………。
…え?何これ?



私は自分でも意外と早くに生まれ変わったことを認めた。
帰り方もわからない。
元の世界の私が生きているのかもわからない。
だけど、『今』の私は確かに『生きてる』。
それに、薄情、と罵られるかもしれないが、『今』の両親は確かに私を愛してくれている。
ならばそれに応えて精一杯生きるのが恩返しだろう。
そう、私は思うのだ。


しかし、その覚悟が私の中で芽生えても、驚かないこととは違うと思う。



現代日本のどこに着物着て昔風の日本家屋構えて本物の刀常備している家があるよ!?
母さんなんか髪と目の色も日本人離れしているし。

ふと、死ぬ直前に洸がやっていたゲーム、戦国BASARAが頭をよぎった。
戦国時代のはずなのにいろいろフライングしてみたり、ムダにイケメンな戦国武将が勢揃いしてみたりするゲームだ。
伊達政宗が英語話して刀六本も装備とか、どんなカオス。



屋敷とか、微妙に現代の造りと似てるし。


…まさか、ね?




「無月?」

母さんが私を呼ぶ。

「あぅ」



一先ずは、今の父さんと母さんのためにも、元気に成長することが私にとっての第一だ。




拝啓、父さん、母さん、洸。
どうやら私はタイムトリップもしたようです。
薄情かもしれないけど、せっかく授かった新しい命。
精一杯生きたいと思います。

もちろん、元の私に戻れるならば戻りたいけれど。


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