紅。朱。赤。
あかあかあか。
視界を染める色。
肉片に臓腑に血液が、様々なアカに沈んでいる。そいつらが着ていた紺色は、アカと混じって黒く変わってアカに浮いている。
あと十人。
「ひっ…」
学ランを着崩した男子生徒に近付く。足元で跳ねたアカが太ももにかかるけど、些細な問題だ。
腰が抜けたのか男子生徒は、逃げない。つまらないなあ。もっと逃げるなりなんなりしてくれよ。
「化け物…!」
「ばけもの?」
ああそうさ。僕は化け物さ。何てったって『殺し屋』の『匂宮出夢』なんだから!!
伸ばした腕が男子生徒の顔面を捉らえる。脳髄を撒き散らして男子生徒が肉片へと変化する。
あと九人。
「お前ら全員殺すのと、人識が来るの、どっちが早いかな」
まあ実践すればいいことか。
僕の着ているセーラー服は、返り血で所々が黒い。あーあ、折角理澄に用意してもらったのに。
気を失った女子生徒が血の海に倒れる。可哀相だな。さっさと眠らせてやろう。胸を薙ぎ払う。
あと八人。

「はやく来ないかな、人識」

早く来いよ。殺し合おうぜ。そして、お前の一番を僕にくれよ。憎悪の感情を僕に向けてくれ。
恋情や友情みたいに脆くない、どろどろとした真っ黒な感情を僕にくれ。まっすぐな憎しみでもって僕を思え。
ああなんて楽しみ!!
あと七人。






全員殺した頃に人識が来た。血まみれの窓の向こうに姿が見える。学ランを着て、『殺人鬼』が登校する。
「…ずるい」
なんでお前は、『普通』の皮を被って学校に通ってるんだ? 僕らには絶対に手に入れられない『友達』だっているんだろ?
ずるい。ずるい。ずるい。
僕らが、僕と理澄が、どんなに足掻いたとしても手に入らないというのに!!
さっき首を落とした女子生徒の頭を抱く。この間、人識に話しかけていた女子生徒。『殺人鬼』じゃない『汀目俊希』を知っている奴。
「『汀目俊希』なんて、死んじまえばいいんだ」
死ね。死ね。死ね。
『汀目俊希』が死ねば、『零崎人識』だけになるだろう。そしたら人識は学校に通えなくなるだろうし、きっと人識に一般人が話し掛けることも無くなる。
殺気を『汀目俊希』に向けて飛ばす。
お前はいらない。
『人識』をよこせ。
名前も知らない女子生徒の頭を抱く。教卓の上に座り、待つ。
さあ、此処に来るのは、
『汀目俊希』か。
『零崎人識』か。





がらりと音を立ててドアが開いた。







(それは嫉妬)





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どうやら需要がないらしい戯言第三弾。ひといずは正義!!