向かい風がペダルを漕ぐ足をふらつかせる。
「shit…!!」
慌てて体勢を立て直し、ペダルに力を入れる。まだまだ先にある、上り坂の先を睨んで、政宗はスピードをあげた。
早く、この気持ちを伝える為。
片倉小十郎と伊達政宗の出会いは、今から400年ほど前の事である。
輪廻の果てに再会を果たした二人には、幸運にも前世の記憶が存在していた。
しかし、それは政宗を困らせる事ともなった。
なぜなら、転生を成したにも関わらず、彼と自分は主従関係であったからだ。
自分は小十郎を好いている。
その感情は何かを求めている。それは主従関係ではない。
もっと別の関係。

桜の花びらが、校舎を桃色に彩る。
駐輪場に自転車をとめれば、大きな桜の木が視界に入った。
思わず笑みを浮かべて、それを見上げる。
堂々と、華やかに。
咲き誇る桜に、自分の思いを重ねる。
彼が来るまで、あと10分。

キィィィッ
ブレーキの音を立て、車が止まる。
駐輪場からそれを見ていた誰かが、ゆっくりと車に近付いてくる。
そして、声を掛けられた。
「Hey.片倉センセ。ずいぶん早い出勤じゃねえか」
顔つきに似合って、不遜な態度で話し掛ける、彼。
「政宗様こそ。卒業式は明日ですぞ」
苦笑しながら車から出た片倉小十郎は、諌めるように政宗に呟く。
政宗は明日に卒業式を控えている。
しかし、今日は休日である。
何故彼が登校しているのか、小十郎は軽く頭を悩ませた。
しばらく考えて、聞いた方が早いと結論を出した。
「政宗様は何故こちらに?」
言えば目の前の主は頭を掻く。「…Ah」
何か逡巡しているようだ。
そう感じた小十郎は、主の言葉を待つ事にした。

何でだよ?
小十郎を目の前にしただけで、あの言葉が出て来なくなる。好きだ?慕っている?愛してる?
like?prefer?favor?
違う違う違う。
そんな軽い言葉じゃない。
言いたいのは、
「小十郎」
「何でしょうか」
今の関係が壊れても良い。今の俺の気持ちに嘘をつきたくない。
さあ言え、独眼竜伊達政宗。
Coolに行こうぜ?

小十郎を見上げる。
彼が笑う。
俺が笑う。

「I love you,so」
小さな呟きは、桜の風に包まれた。
逸る感情、走る情。

(涙が出るほど)
(君が好き)
------「伊達主従」×「告白センセーション/鏡音リン」
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