※テニプリと黒バスのクロスオーバー

バスケが嫌いになったみたいなんです。
そう呟くと、隣に座っている少年は哀しみを露わにした。どうしてだい。促すような少年の声に背を押されて言葉を吐き出す。
「チームの皆と、見ている方向が違うんです」
隣の少年は首を傾げて尋ねてきた。どんなふうに?
「皆は、勝利しか見ていないんです」
だけど、それは僕にとってのバスケではなくて。
「皆のバスケには、楽しむって感情がないような気がするんです」
隣の少年はただただ頷いて聞いていてくれた。どこか儚い笑みを浮かべたまま。
「僕のバスケは、きっとあそこにはないんです。だけど何処にあるかわからないんです」
そんな考えがぐるぐる頭でとぐろを巻くんです。解決しないって分かってるのに。
「…俺もね」
少年が口を開いた。
「君のチームメイトみたいに考えてた時期があるよ」
常勝の二文字しか自分のテニスに存在していなかった時期が。
「…意外です」
正直に言葉にした。だって今隣に座っている少年は、とても楽しそうにテニスをするのだから。
「実際、最近だよ。テニスを楽しめるようになったのは」
どこか悲しそうな笑みを浮かべて、少年は呟く。風が二人の髪を泳がせた。
「…どうやってテニスを楽しめるようになったんですか?」
少年が笑った。初めて見る無邪気な笑みだった。
「テニスで、負けたんだよ」
楽しそうに、心底楽しそうに少年は語る。
「負けたのに、楽しいんですか?」
「確かに悔しいのもあったけど。勝利しか見えていなかった俺のテニスは、楽しんでやってるテニスには敵わないんだ、って思い知ったから」
あの時に負けたから、今の俺はテニスを楽しめるのさ。
少年は笑う。清々しい笑いだった。
「…僕のチームメイトも、負けたらバスケを楽しめるようになるんでしょうか」
「……うーん。はっきりとはわからないけど、試してみる価値はあるんじゃないかな」
それにさ。
少年は言葉を続ける。
「君は本当にバスケを嫌いになってはいないだろう?」
本当に嫌いになっていたら、悩んでないと思うよ。
「…そうですね」
ただ、自分のバスケに疑問を持っただけだ。バスケットボールというスポーツが嫌いになった訳ではない。
「ありがとうございます。色々聞いてもらって、すっきりしました」
「俺は大したことはしてないよ」
少年が笑みを浮かべる。そうだ。
「名前を教えてもらえませんか」
「名前を教えてもらえないかい」
ハモった。二人で笑う。
「黒子テツヤです」
「幸村精市だよ」
手を差し出して、握手を求められた。
「また会う事があったら、君のバスケを見せてくれないかい?」
「わかりました。じゃあその時は君のテニスも見せてください」
「勿論だよ」
固く手を握って、離れる。背を向けた。きっと二度と会わないと分かってはいる。それでも、再会の約束を。
「また会いましょう」
「またね」
さあ、自分達の物語に帰ろうか。










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支離滅裂。シチュエーションはログアウトしました。
初クロスオーバーが、テニプリと黒バス…。久々に黒バス読み直してたら「キセキと似た奴らをどっかで見た覚えがあるな。そうだ立海だ!!」って滾りまして…。「好き×好き=萌えなんだよ」って友達の言葉が頭をよぎったり。