「もう、あいつを求める意味はないだろう?」
あいつは、そう言ってた。
「一人で生きられないわけじゃないだろう、お前もあいつも」知ってるよ、それくらい。
でも、求めちゃうの。仕方ないでしょ?
手探りで暗闇に手を伸ばす。
あの人の影を追いかけて。
追う人
(夢を追うよりも愚か)


魚になりたい。
感情なんて気にしないで、ゆらゆら泳ぎたい。たった一人で漂うの。耳も目も塞いでさ。
そうして、遥かに見える地面を嘲笑うの。
なんて馬鹿らしい夢でしょう!案の定、あいつには笑われた。

踏み付けられた夢
(何も考えたくないの)

耳を澄ましたら、あの人の声が聞こえた気がした。
「まだ夢を見てるのか」
あいつはきっとまたそう言うんだ。わかってるよ。きっと俺様の心はまだ夢を漂ってるんだ。
それは、二度と醒めない夢かもしれないな。
ンドロールは見当たらない
(夢の中かもわからない)


軽快なポップスが、耳から離れる。イヤフォンが外れている。苛々する。些細な事なのに。思わず踵を鳴らして、地面に八つ当たり。
未だに音を鳴らしているイヤフォンをポケットに突っ込む。ついでに音楽プレーヤーの電源を切る。
手元のチョコレートが体温で熔けだしていた。慌てて、一口齧る。甘い。甘ったるい。その事さえもいらつく。
夜空を見上げると星の海。だけど、都合よく流れ星なんて流れない。溜息ひとつ。
ねぇ、幸福をくれるなら、流れてみせてよ。
ぽつり、星に八つ当たり。
闇の中の月から見える俺様は、きっとちっぽけなんだろうな。蹴り上げた小石は闇に消えた。
ラジディーは嫌い
(悲劇はもう沢山だ)


何処を目指しているのだろう。何時まで探し続けるのだろう。何回声を殺して泣いただろう。白とも黒とも言い難い、灰色の現実に何度押し殺されそうになっただろう。
それでも箱庭で生きるよりは。あの人に会える望みはある。
ねえ、もし会えたなら。
俺と一緒に楽園を捨てて、旅をしてくれませんか。
ランデブーでもしませんか
(二度と箱庭には戻れない)


どうせ届かないなら、手を伸ばさなければ良い。でも、暗闇だとわかってても、きっと何かがあるかもしれない。
だから、ちっぽけな俺は今日も手を伸ばし、声を枯らす。
暗闇の中、誰かの影を踏んだ。ロに迫る
(やっと、追い付いた)


影踏みエトランゼ
(それは、彷徨い続ける人)

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「影踏みエトランゼ/初音ミク」で転生佐助
140412に改定