「久々に跳び蹴りをくらいました…」
顔を袖で拭いながら、元蛇、もとい光秀は言う。蘭丸の蹴りが見事に額を直撃したため、額が赤くなっていた。
光秀はわざとらしく額を撫でてから、蘭丸を見る。
「…ところで、何故蘭丸が此処にいるのですか?」
「お前が『困ったら行け』って言ってたからだろ!?」
「そんな事もありましたっけ」
「なかったら此処にいねぇよ!!」
「…ちょっと待って」
わいわいと騒ぐ蘭丸と光秀を制止したのは慶次。
「何、二人は知り合いだったの?」
尋ねれば、二人して頷く。
「…取り敢えず、中に入りませぬか?」
いつの間にか蚊帳の外になっている幸村が呟いた。



「…やはり、狗神でしたか」
部屋に入り、座布団に座った光秀は言った。幸村と光秀が向かい合わせに座り、幸村の隣に佐助、光秀の隣に蘭丸と慶次が座している。
「知っておられたのですか」
「…薄々は気付いていました」
苦く笑って光秀は呟く。
「蘭丸が、初めて私の住み着く神社を訪れた時に、昔の私と同じ匂いがしたのです」
「同じ匂いって…?」
慶次が問う。光秀は答える。
「憑物筋です」
蘭丸は首を傾げる。なんで憑物筋が光秀と同じ匂いなんだ?
むむ、と悩む蘭丸に幸村が助け舟を出す。
「光秀殿は昔、憑物筋に生まれた方なのでござるよ」
幸村は言葉を続ける。
「某が知る中でただ一人、自らの憑物を封印した方でござる」
蛇が苦笑いを浮かべる。
「実際はある方の手を借りたのですがね…。それに結局、人間には戻れませんでしたし」
「…それで蛇に」
慶次の言葉に光秀は頷く事で答える。
幸村が促すように蘭丸を見た。
蘭丸は意を決して発言する。
「…人間に戻れなくても良いから、憑物を封印する方法を教えてくれ」
「……本気ですか?」
光秀が覚悟を確認するように問う。蘭丸は頷いた。
蘭丸の目を見た光秀は溜息をついて、言葉を紡ぐ。

「…わかりました。ならば、私の力をお貸ししましょう」



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