これの設定で中途半端なの二本。

「佐助、あと何匹程いるか分かるか!?」
焔を纏った槍で怪蟲を斬り伏しながら、幸村は叫んだ。パーティーの後列で佐助は叫び返す。
「絶望的なくらい!!」
その顔は蒼白で、魔力が残り少ない事を表していた。幸村の隣の政宗が舌打ちをしながら、雷を纏った刀を振るう。巨鳥が焼け焦げて墜落した。
「…ほんとっ、うっとおしいなっ」
慶次が身の丈程の大刀を横に持つ。暫く精神集中の為に瞑目し、呪文を唱える。発動したのは風属性の魔法だ。風属性に耐性の無い魔物を尽く薙ぎ払っていく。
だが、それでも魔物の数は少ししか減らない。
「政宗っ、どけ!!」
碇鎗を高々と掲げ、元親が声をあげる。政宗がその場を飛びのくと、風が巻き起こった。風は瞬く間に土を巻き上げ、竜巻へと変化する。慶次の呪文と同じ風属性の特技だが、風属性に耐性のある敵にも効果がある。それでも、敵は依然として多いままである。
「神の御名の元に眠れ…!!」
小十郎の刀の軌道が空に十字を描き、光を纏った。彼の目の前にいた魔物達が光の十字に撃たれて倒れる。次いで後列にいた元就が呪文を放つ。かなり広範囲に効果が及ぶ、氷雪系の魔法である。
「一匹一匹は雑魚だが、こうまで数が多いと厄介ぞ」
元就の言葉に佐助は辟易としながら頷いた。数十程度の魔物を倒したものの、魔物はその十倍以上の数がいる。元就の魔力も大分限界に近くなっている。
「アイテムも残り少ないし。…絶体絶命って奴?」
おどけた様子で慶次が言うがそれを笑えるような余裕は、彼らにはなかった。
「………?」
妙な気配を察知して、元就は眉をひそめた。瞳を閉ざし、違和感の正体を探る。程なくそれは見付かった。
「…此処を中心にした大規模な攻撃呪文が展開されようとしておるな」
「元就、それマジか!?」
碇鎗で敵を薙ぎながら元親が怒鳴る。目を開けた元就が、虚言を言って何になる、と返した。
「うわ、それって相当ヤバいよねー」
佐助が慌てて、急激な温度変化によるダメージを軽減させる結界を張る。その呪文で佐助の魔力は尽きたのか、しゃがみ込んでしまったが。元就はその横で全員に守備力を強化する呪文を唱えた。どんな類の攻撃呪文かわからないから、あらゆる可能性を考慮しておかなければならない。小十郎は自身に守備力強化の呪文をかけ、仁王立ちの姿勢をとった。これは特殊な特技の一つで、パーティー全員に向かう攻撃を自身のみに向かわせる特技だ。慶次は取り敢えずパーティーの回復の為にステップを踏み始めた。これも特殊な特技の一つで、魔力を消費せずともパーティー全員の体力を回復出来る。瞬く間に全員の傷が癒えていく。政宗が魔法の威力を減退させる結界を張り、幸村は佐助を、元親は元就を庇う姿勢をとった。
「来るぞ」
元就の呟きと殆ど同時に空の一点が煌めいた。爆発音が鼓膜を叩き、粉塵が一行を包んだ。だが、こちらへの攻撃ではない。明らかに魔物を対象にした攻撃だ。
「…味方、でございましょうか?」
幸村の呟きに、政宗が近くの丘に目をやる。先程の魔法の気配はあちらからしていた。粉塵が晴れて、辺り一面が見回せるようになる。見えたのは、地に伏し、呻く魔物共。あれだけの数の魔物が、瀕死状態になっていた。
「…unbelievable」
政宗が黄玉色の瞳を見開いて呟く。魔力分析に秀でている彼には、先程の呪文がどういったものだったかがはっきりと分かっていた。
威力で言えば、慶次や元就の魔法の方が上だ。だが、範囲が広すぎる。いったいどれだけの魔力を消費したのか。
「――おおい、無事か!?」
丘の上から声が飛んでくる。そちらを見れば、細いシルエットとゴツいシルエットが並んでいる。一度手を振ることで無事である事を示せば、二つのシルエットはこちらに駆けてきた。
目の醒めるような鮮やかな黄色の胸当ての上から同じ色の羽織りを身につけた青年と、紫がかった色の鎧で細い体躯を包んだ青年。
「よかった。なんとか間に合ったな」
「貴様がぐずぐずとしていた所為だろう。家康」
厳しいな三成、と家康と呼ばれた青年が頭を掻いた。



◆◇◆◇◆

目の前に立ち塞がったのは、血のような赤い髪の男だった。鍛え上げた体躯を黒い衣で覆っている。
「…小太郎?」
後列にいた佐助が声を零す。ふらふらと近付きながら、手を延ばす。
「やっぱり小太郎だ。捜してたんだよ。お前が里からいなくなってからずっと」
触れるか、と思ったところで佐助の手が払われる。払ったのは赤髪の男だ。
触るな。
確かにそう唇が動いた。
「…え、ねえ、小太郎? 帰ろうよ。かすがも、皆も会いたがってたよ」
「…違う」
今度は声になっていた。赤髪の男は佐助を睨んでいた。
「里に己の居場所はない。己の居場所は此処だ」
主が、そう言ってくれた。
すらり、と刃が滑る音が響いて、一行は表情を固くした。双刀を両手で逆手に持って、小太郎は呟く。
「たとえ佐助だろうと、主の邪魔をするなら殺す」
「なに、言ってんだよ。小太郎。だって、」
動揺している所為か佐助がたどたどしく言葉を紡いで、小太郎を諌めようとする。だが。
「…里なら、滅びただろう」
小太郎の言葉に佐助が目を見開いた。
「皆殺されて、火をかけられて」
ぞわり、と肌が総毛立ち、政宗は刀を鞘から引き抜いた。紛れも無く小太郎から放たれているのは殺気である。
「やったのは己だ」
その言葉を合図にしたかのように、幸村が二槍に火を点し小太郎に切り掛かる。その二槍を、小太郎は二本の小刀で受け止めた。小太郎の闇色の瞳が幸村の紅蓮の瞳を睨みつけた。
「佐助の主か」
「いかにも」
がんっ、という音がして幸村が吹っ飛んだ。どうやら腹を蹴られたらしいが、さしたるダメージもなく着地した。
「佐助の一番は、翁(じい)様で、里の皆で、かすが。己は一番ではなかった」
なあ佐助。
小太郎が口の端を持ち上げて笑みを刻む。
「こいつら、皆殺してしまえば己は一番になれるか」
反応出来たのは三成だけだった。一瞬で目の前に移動してきた小太郎の双刀を直刀で受け止める。だが、筋力の差からか小太郎の方が優勢に見えた。
「弱いな」
横から家康が正拳をたたき付けようとするが、あっさりと躱される。三成から飛び離れた小太郎は、佐助の隣に降り立った。
「理解できない。どうしてこんな奴らに力を貸す?」
ぶわり、と小太郎の周りから黒い靄が溢れる。瞬く間に広がったその靄は、政宗達を包んだ。
「…魔法が発動しない…っ」
政宗が愕然として呟く。この黒い靄はどうやら魔法発動を阻害する類のものらしい。
「弱い」
黒い靄から小太郎が現れる。視界が靄で邪魔されていたために、小十郎の反応が遅れた。刀を抜くのは間に合わない。
金属音が鳴り響く。
それは、小太郎の双刀に佐助の鎖が絡み付いた音。ぎりぎりと鎖を引きながら、佐助が言う。
「此処は俺様がなんとかするから、皆先に行ってて」
「だが…」
幸村が躊躇う。佐助が珍しく主を睨んだ。
「早くしないと、侵入がばれるでしょ。折角のチャンス、無駄にするつもり?」
その言葉に背を押されたのか一行は佐助を残して駆け出した。目指すは、第六天魔王。
「…さて、小太郎。久々に手合わせでもしようか」
佐助は、鎖に大型の手裏剣を繋げる。幸村の前では使ったことのない武器である。幸村には、決して見せたくない武器である。



Quixotic Fantasy






--------
うわーお。意味不明にも程がある。えっとRPG設定です。なんかSSを三本入れるはずだったのだけど、…あれ?SS?
書いてて楽しかったです。


裏設定とか。
小太郎、秀吉、光秀は信長(ボス)の部下。松永さんはラスボス。半兵衛はとっくの昔に死去。

特技と呪文(DQ)
火炎斬り(幸村)→稲妻斬り(政宗)→バギマ(慶次)→ハリケーン(元親)→グランドクロス(小十郎)→ヒャダイン(元就) →フバーハ(佐助)→スクルト(元就)→スカラ(小十郎)→仁王立ち(小十郎)→ハッスルダンス(慶次)→マジックバリア(政宗)→かばう(幸村&元親) →イオラ(三成)
火炎斬り(幸村)→回し蹴り(小太郎)→疾風突き(小太郎)→正拳突き(家康)→黒い霧(小太郎)