「とりっくおあとりいとでござるぅぅう」 玄関から煩い声が聞こえて、俺様達は顔を見合わせた。 明らかに旦那の声だったよ。つーかインターホン鳴らせよ。foolishnessだな。取り敢えず猿、行け。えー俺様ー。 そんな事をぐちぐち言い合ってると、もう一度旦那の声が聞こえた。ご近所迷惑だから、もー少しボリューム落としてほしいな。仕方なく、玄関に向かう。がちゃりと鍵を開けて扉を開けば、案の定そこには旦那の姿。目の部分だけ切り取られた白い布(たぶんシーツ)を頭から被っている。後ろには黒い布を頭から引っ被った毛利サンと、スーツ姿の慶次が見えた。 「お帰りください」 思い切りドアを閉めようとしたら、旦那に阻まれた。ええい、この馬鹿力め。 「とりっくおあとりーとでござるぅぅ」 半泣きでドアを掴んでいる旦那は正直ウザい。シーツも相まって更にウザい。 「近所迷惑だから、中入れちまえー」 親ちゃんの声が聞こえた。うわあ伊達ちゃんキレてないかな。集中が途切れると機嫌悪くなるからなあ。 そんな事を考えている間に、訪問者三人は靴を脱いで上がってきた。慶次だけが申し訳なさそうだ。おいあと二人、慶次を見習え。 「良い匂いがするでござるぅぅ」 「こら、旦那っ」 引き止める前にキッチンに駆け出した旦那がひっくり返る。原因はスリッパを履いた足。 「おい真田。さっきからワイワイと。noisyなんだよ」 どうやら我慢の限界に達した伊達ちゃんが旦那の胸元を蹴飛ばしたようだ。伊達ちゃんの手にはクッキーが山になった皿がある。 「あ、クッキー粗熱とれた? 親ちゃん、パイは?」 「あと10分くらいだと思うぜ」 「じゃあ放っておいてもOKだな」 旦那を親ちゃんが引きずってキッチンを後にする。その後ろに伊達ちゃんと俺様が続く。向かったリビングでは、慶次と毛利サンがテレビを見ていた。 「そういやあ、どうしてお前らdisguiseしてるんだ?」 慶次と毛利サンと足元に転がっている旦那を見ながら、伊達ちゃんが疑問を口にする。因みに旦那はシーツに絡まって、なんだか凄い格好になっていた。 「当然であろう。ハロウィンだからだ」 ものすごいドヤ顔である。黒い布を被っててもわかるくらいには。 「因みに、元就は何のコスプレなんだ?」 親ちゃんが尋ねたら、毛利サンはこれまたドヤ顔をして言った。 「死神だ」 そう言いながら、懐から何かを取り出す毛利サン。どうやらお面らしいソレを装着すれば、ムンクの叫びのような顔が黒い布の隙間から覗いた。そのお面どこで売ってたのさ。怖いって。 「真田は?」 クッキーをラッピングしながら伊達ちゃんが聞く。なんとかスーツから脱出したらしい旦那が元気よく答えた。 「ごーすと、でござる」 そのシーツはゴースト衣装だったのか。レベル低くね? 「慶次は、SERVAMP?」 「正解ー」 シルクハットをくるくると回しながら慶次が答える。髪、わざわざ紫色に染めたのかな。いや好きだけどね。吸血鬼だからオッケーなハズだし。 「パイ、そろそろできたか」 親ちゃんがそう呟いて、立ち上がる。どうやら毛利サンに被せされたらしい、銀色の犬耳が笑える。因みに伊達ちゃんの頭にも黒い猫耳が装着されていた。下手人は慶次か。「はーい、かんせー。真ん中空けろー」 親ちゃんが両手でパイを運んできたから、慌てて机の上を綺麗にする。とん、と置かれた皿の上からは甘い匂い。 「いただきまーす」 皆で手を合わせて言う。切り開かれたパイから、ふわりと南瓜の香りがリビングに広がった。 Happy Halloween!! ------ たまにはのんびりと。ハロウィン企画第四弾です。佐助が魔女帽被らされる話が入らなかった。SERVAMP好き増えてください。 フリー配布は終了しました。 |