「いやいや、絶対いや」
「頼む!一日だけだから!」
彼女の前に両手を合わせて苦笑いを浮かべながら一日だけ、と言う。これがだいたい今十分ぐらい。ソファに据わった彼女の前であぐらをかいてお願いする俺と、そのお願いは聞けないと首を振る彼女。プリンを食べながらテレビを見る紫原。
「部活行ってください!」
「部活休む日なんだよ!」
「部活休んで私と何がしたいんですか!」
「だから内緒なんだってば!」
「内容が解らないのになんで外に出なきゃダメなんですか」
「それは、あれだ。俺の息抜きに付き合えって言ってるんだよ」
「私以外に頼んでください」
先ほどからずっとこれだ。紫原はなんの手助けもしてくれない。隣でずっとプリンに夢中だ。頼むから彼女を外に連れ出すのを手伝ってください。
「絶対楽しいから!退屈させないから!」
彼女は急に黙り込んだ。手ごたえありかと思ったが「いやなのに」という声に少しだけ諦めが過ぎった。
「ケーキ、一緒に食べに行きたかったんだよ」
その言葉に彼女が急に食いついたように目を輝かせる。
「ケーキ!?」
「おう、店舗でしか食べられないし、俺、誘う相手いないし」
「行き、たい、な」
紫原の妹は案外簡単に釣れた。

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20120919
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