ずっと無言だった。お互い何も話さなかった。
「あ、そこ、CMで観たことのあるお店だ」
「ああ、電気屋だな」
頑張って話してもこれが精一杯で辛すぎる。涙が出てきそうだ。やっぱり外に出たのは失敗だったのかな。青峰、あんまり楽しそうじゃないし、顔、笑ってくれないし。家に来た時はそれなりに表情豊かというか、なのに今は静か過ぎるというか、とにかく話が続いてくれないよ。
「お、ここだな」
オシャレなお店の前で立ち止まる青峰。
「行くぞ」
「う、うん」
扉を押すと可愛い音がなった。いらっしゃいませ、とメイド風の可愛い店員さんが笑った。ショーケースにはかわいいデコレーションのケーキがずらりと並んでいた。
「か、かわいい!」
目をキラキラ輝かせながらケーキを眺める私に青峰が「ぶっ」とふきだした。
「な、なに?」
「いや、おまえかわいすぎ」
「えっ」
「あっ」
お互い顔が真っ赤になる。目をそらして、再びショーケースのなかをみる。
「モンブランとガトーショコラお願いします」
「ドリンクは何になさいますか?」
「レモンティーのアイスで」
「はい、お会計は一緒でよろしいでしょうか?」
別々で、という言葉をさえぎって、青峰が「はい」と言った。「俺はイチゴショートとフルーツタルトとアイスコーヒー」と言って私の方を見る。
「今日くらい、おごらせとけって」
白い歯をみせてニッと笑う彼。そんな、奢らせるだなんて、とあせるけど、店員さんの一人が会計をする青峰をおいて、では席はこちらです、とわたしを誘導した。
「素敵な彼氏さんね」
「え、え」
焦る私ににっこり笑って去っていった。席にきた青峰と目があわせられなかった。

ショーケースに並べて
20131019
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