紫原くんは意外と器用で順調にお菓子作りが進んだ。大きな手だからたまごを割るのが簡単だったり、ちょっと羨ましくなった。
「いいね、紫原くんは手が大きくて」
「んー?でも女の子で俺より大きかったら大変だよー?」
だって服のサイズとか探すの大変じゃん?と付け足した。そこ?と笑って見せれば「俺でも大変なのに」と口を尖らせた。子供みたいで可愛い。
「チョコクッキー作りすぎたね」
「でもー俺がいっぱい食べるし。フォンダンショコラできたかな?」
香ばしい香りのするクッキー、レンジでぐるぐるまわるフォンダンショコラ、それから冷蔵庫の中にいれられたトリュフ。作りすぎ、かな。お兄ちゃんに怒られそう。ボウルのなかにはまだチョコレート残ってるし…。
「このチョコどうしよう…」
「食べればいいじゃん」
「でもなあ、北海道のお菓子みたいにポテチにつけるのは…無理だね。ポテチ、味ついてるし…うーん」
どうしよっかなあ、ともごもご言っていると紫原くんがわたしのくちに指をつっこんできた。
「だから普通に食べればいいじゃん」
指にはチョコレートが絡み付いていて、口の中はほろ苦くて、わたしはその場にうずくまってしまった。顔を真っ赤にして。
「どうしたの?真希乃ちん」
「紫原くんのバカ…」
ああもう、だめだ。

抜け落ちた空
201310109
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