「幸、いるかな」
こんこん、とノックが聞こえた。黒子くんも私もびくりと肩を振るわせる。いつの間にか休み時間になっていたらしい。涙を拭って「いるよ」と返事をすると扉ががちゃりと開いた。
「こんにちは、赤司くん」
「ああ、いたのか。ところで幸、今日は部活がなくなったんだ。帰りにごはん食べに行こうと思ってね」
黒子くんをほとんどスルーして私に近寄るお兄ちゃん。「行きたい」と呟けば「わかった」と頭を撫でてくれた。
「ところで、何で泣いていたんだ?」
お兄ちゃんの目がいきなり鋭いものとなり、黒子くんへと向けられる。
「お兄ちゃん、黒子くんのせいじゃないの、私の」
「赤司くんのせいですよ」
黒子くんは私の言葉を遮ってそう言った。さっきまでの穏やかな顔も声もどこかへいってしまった。黒子くんの声がはじめて怖いと思った。お兄ちゃんは不機嫌そうに冷たい視線を黒子くんへと向ける。火花が散るみたいで怖い。できればこの場から離れたいものだが、とりあえずお兄ちゃんの機嫌をとらないと後々怖い。
「黒子くん、変な冗談」
「ちょっと黙っていようか、幸」
お兄ちゃんはにこりと威圧のある笑顔を私へと向けた。

間違えた世界の生き方
20120926
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