彼女が彼、赤司征十郎のかかわりで小学生の時、教室で何かあったのだろう。ただし、それを赤司征十郎が知らないから話がこじれて彼女の心もこじれているのだと思う。彼女は先ほどからずうっと俯いている。授業終了のチャイムのなる十分前。
「何があったか訊いても、教えてくれませんよね」
彼女は少しも動かない。寝ているのかと思って顔を覗き込もうとしたとき顔を上げた。
「誰にも言わない約束。お兄ちゃんにも言わない約束。守れるなら教えてあげる、でもきっと、私のこと嫌いになる。それでもいい?」
「幸さんのこと嫌いになったりしませんよ」
微笑むと、わっと彼女は泣き出した。彼女の隣に腰をかけなおし背中をさすってやる。彼女は普段なら考えられない、赤司という名字が似合わないような弱弱しい声で話し始めた。

小学生の頃、兄とそっくりに生まれた彼女は友達が沢山いた。兄と同じ容姿を持った事に対してからかわれた事はなかったし、兄と同じく人を下に従える能力を持っていたことから嫌われることはなかった。それどころか兄の威圧と違って、優しさで人を従えていたために好かれていた。そんなある日彼女に親友と呼べる女の子の友達ができた。くり色の髪の毛が自慢の女の子である。教室ではいつも親友と一緒にいて、下に従えてきた友達も二人を中心に集まった。そのうちに、自然の家だったり遠足だったり、とても充実した日々を送った。しかし、仲良くなるにつれて親友の秘密を聞かされる。親友が赤司征十郎を好きだと聞かされた。ただし、兄である赤司征十郎は女に興味がなく、寧ろ嫌いだということを彼女は知っていた。だから親友が告白するのを回避させ回避させていたが、ある時親友がラブレターを兄に渡せと言ってきた。断ることもできず兄にそれを渡したが、兄は読まずに捨てた。返事を兄に求めても興味ないとしか言われなかった。返事はまだかまだかと毎日言ってくる親友。嫌気がさして、兄にそれを告げると、兄は鋏を持ってでかけた。その日は兄の言いつけで学校を休んだ。次の日学校に行くと、冷たい視線が彼女に集まった。疑問に思いつつも気付かないフリをして席に着く。教科書を整理していると教室に親友が入ってきた。ただし、自慢の髪の毛が男子のような短さだった。そこからばらばらと関係が崩れる。威圧ではなく優しさで人を征服するということは、信頼が崩れやすいという事である。教室で彼女は孤立した。謝ろうとしてもクラスメイトは彼女から遠のいていく。それが苦しくて、そのとき自分の役割だった図書委員を利用し図書室に居座った。その癖で、今も図書室に居座っている。当然、教室にいる理由を兄には言っていない。彼女は人と関わるのが怖いのである。

「僕は幸さんを嫌いになったりしませんよ」
「なんでそんな事いえるのか解りません。永遠なんてありえないから」
屁理屈を聞こえないフリなんてできない。彼女の涙で濡れた袖を見て切なくなりました。

過去と現在の境界がひけない
20120922
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