「幸さんは、教室に行きたいと思っているんじゃないですか?」
彼女は僕の言葉に目を見開いた後「冗談はよして」と俯いた。目には淀んだ影。何かあったんですかと聞いても何もないと首を振る。絶対、何かあったはずなのに。
「赤司くんが絡んでいそうですね」
「それ以上言うんだったら黒子くんでも、」
「幸さんは優しいので僕の事を殺せません。赤司くんの妹でしょうけど、赤司くんとは違います」
「……」
黙り込む彼女。手に持っていたシャーペンを机に置いた。
自習の三時間目。彼女の望み通り図書室の司書室へきて紅茶を飲みながらお喋りしているとふと疑問に思ったことを口から滑らせていた。彼女が黙り込む事によって何をしたのかわかった。変な空気を作り出してしまった。
「すみません。忘れてください」
「忘れる事なんでできませんよ」
苦笑いを浮かべてクッキーを食べ、彼女は俯いた。僕がいないほうがいい気がしてきました。
「ここにいて、お願い」
いきなり僕の心を呼んだようにそんな事を言うから動けません。震える彼女の過去、とはいったいなんでしょうか。訊きたくても、訊けません。

罪悪感を刻む鋏
20120909
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