「悪いね、黒子」
「赤司くんがここに来る予定はなかったのですが」
「え、お兄ちゃん?」
玄関から聞こえた声に吃驚してリビングから出ると、お兄ちゃんが立っていた。若干戸惑っていると「幸に話があるのだが」とお兄ちゃんが口にした。黒子くんはどうぞ、と部屋に招き入れる。
リビングのソファに腰を静めるお兄ちゃんの前に私が座り、黒子くんがコーヒーを出して私の隣に座った。少し不服そうにおにいちゃんは眉をひそめた。生ぬるくなりつつあるココアに手を伸ばそうとするとおにいちゃんは話し始めた。
「今日、教室に行ったそうじゃないか。何がきっかけだったのかな」
「黒子くんに誘われたから」
「僕が言っても絶対行かなかった教室に、か?」
どきりとする。お兄ちゃんの視線が私をしっかり捕らえてはなさない。
「顔が少し赤いね、熱でもあるんじゃないか?」
お兄ちゃんは鋭い。さっきまでキスしてたから顔が赤いんだよ、なんて死んでも言えない。
「赤司くん。僕からも少し赤司くんにお話があるのですが」
「なに?」
「僕、幸さんの彼氏になりました」
ぎょっとした目で隣の彼に「ちょ、黒子くん!?」と言うと彼はこちらを少し見て「大丈夫ですよ」と笑った。大丈夫じゃないよ!
「どういうことかな、幸」
「………」
「黙っていたって解らないだろう」
「……私が黒子くんに好きって言ったの」
「へえ、僕より?」
「お兄ちゃんはお兄ちゃんとして好きだけど、黒子くんは別の好きなの」
ああ、お兄ちゃんの視線が痛い。ずさずさ突き刺さる。絶対怒ってる。
「ということなんです、赤司くん。でも赤司くんに認めてもらわないと、ダメだと思って。それが僕からのお話です」
「認めるとでも思った?」
その言葉に、やっぱダメか、連れ戻される、と不安が渦巻き始める。が、お兄ちゃんはくすくす笑い始めた。顔を上げるとやっぱり笑っていて、黒子くんも同じように吃驚していた。
「認めない理由がないよ」
「え?」
「黒子、僕の負けだよ。幸を絶対幸せにすること。変な事したら殺す」
「わかってますよ、赤司くん。幸さんの悲しむような事、僕には絶対出来ません」
何が起こったのか、流れが早すぎてついていけない。黒子くんはふんわり笑って私の頭を撫でた。
「認めてもらえましたよ、これで公認カップルです」
顔を赤くするとお兄ちゃんは「じゃあ僕はお暇するよ。コーヒーありがとう」と言い捨てて出て行った。
「黒子くん……?」
「ごはんでも食べましょうか」
キッチンに向かう黒子くんを追いかけてわたしもキッチンに入った。

窓辺の水滴
20121021
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