教室の前まで来たのは今日が初めてだ。廊下を歩いた事だって2、3度だろうし、廊下を歩いた時はだいたい放課後とか、人がいない時間ばかり。緊張で汗が手のひらに滲む。同い年であろう生徒たちが私を見る。目を合わせないように俯くと、彼は私の汗ばんだ手をぎゅうっと握った。
「怖いですか」
別に教室に入るのが怖いというわけではない。本当に怖いのは同級生。
手を握り返して「怖いよ」って呟いたら握った手に力が篭った。時間的にはあとちょっとでチャイムが鳴るころだろう。彼は私の手を引くつもりはないらしく、私が歩みだすのを待っているみたいで、扉になかなか手をかけない。
「黒子くん」
「なんですか」
「もし、わたしが逃げ出したら嫌いになる?」
「嫌いになんかなりませんよ、好きって気持ちは何があっても変わりません」
「わたしがみんなに嫌われても、黒子くんはわたしの味方でいてくれる?一緒にいてくれる?」
ふふっと柔らかな笑みを私に向けた。春風みたいに温かで、木漏れ日みたいに気持ちを落ち着かせる。黒子くんの魔法はとってもすごい。わたしの足を動かしたんだもの。
ガラリ、扉をあけた。

指と指を結ぶ糸
20121018
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