いつもより早く学校にきて図書館に行って鍵を開けると本の臭いでいっぱいだった。この少し古びた臭いが好き。今日もここで一日過ごそう。そう思いながら司書室に行くとダンボールがひとつ。新刊が入ったらしく、私の仕事のひとつである学校の名前の入ったはんこと補強用のシートと貸し出し用の封筒と表を用意して一冊一冊綺麗にはっていく。こういう地道な仕事が好きだ。全部張り終わる頃に先生が来て、今日は早いわね、と微笑まれる。
SHRの始まる二十分前に急に図書館の扉がぎいっと開く。まだ開館してませんよ、と司書の先生が言った。返ってきた言葉は「知ってます、少し幸さんに用事があって」という紛れもなく黒子くんのものだった。
「幸さん、一緒にSHRに行きましょう」
「どうしたんですか、黒子くん。私は教室には…」
「今日は絶対楽しいはずなんです。お願いします」
頭を下げる黒子くんは初めて見た。私が教室に上がりたくない理由を知っていてこんな風に頭を下げるんだからきっと何かあるのだろう。司書室の本棚の一角に置かれた教科書とノートを鞄に詰めると司書の先生に「いってきます」と言ってみる。少し驚いた顔の司書の先生だったけど、すぐに「いってらっしゃい」と顔のしわを増やして微笑んだ。
「今日は何かあるの?」
「いつもどおりです、が、僕が一緒にいたいんです。一人で授業受けてるみたいで嫌なんです。よく考えたら幸さん、僕の隣の席なんですよ。窓際なんです。一緒に授業受けてください。……ダメですか?」
彼に弱い私はトラウマなんて忘れてすぐに承諾してしまった。
こうやって胸の穴を埋めていくから黒子くんの傍にいたい。

本の幽霊
20121018
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -