「律子っち!!」
資料を持って体育館に帰るとお兄ちゃんが涙目で両手を広げて駆けて来た。私は隣にいる赤司くんが少しだけ嫌そうな顔をしたのを見逃さなかった。だからお兄ちゃんを華麗に避けて資料を落とさないようにしっかり持ち赤司くんの後ろに回る。赤司くんはきっと資料がぐちゃぐちゃになるのを想定したんですよね。
「酷いっすー!!」
泣きそうになるお兄ちゃん。赤司くんが「煩い」と一喝するとすぐに静かになった。私は赤司くんを怖いとは思わないけれどお兄ちゃんは赤司くんの事が怖いのかな。とにかく資料を体育館のステージの隅っこに置く。赤司くんは「じゃあ資料、とじて」とホッチキスをくれた。だからぱちんぱちんと地味な仕事をする。こういう仕事、楽で大好きだ。
だがその平穏を崩すように私の最も苦手(と思われる男)がやってきた。
「次、どこと試合やんの?」
バスケットボールを頭にのせた青峰くんはそう言った。悪いやつじゃないと解ってはいるけれどどうしても距離を置いてしまう。彼が私に触れない距離まで後ずさり、無理矢理笑顔を作る。
「赤司くんに訊けば解るんじゃないの?」
青峰くんは不服そうに「そうか」と言った。態度が悪いのは解ってますごめんなさい。
「あ、あのさ」
彼は振り返り、頭にのせていたバスケットボールを手で持ってにかっと少年のように笑った。
「無理矢理笑わなくても、そのうち自然と笑えるようにしてやるから不細工に笑うな」
ぐさり。

彷徨う心を包む笑顔に似た悪魔
20120910
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