「おはよう、ございます」
朝練、ということで体育館に入る私。お兄ちゃんは着替えがあるからと部室に行った。体育館にはさつきちゃんと青峰くんと赤司くんがいた。青峰くんと目が合って挨拶すると返事が軽く返ってきてドリブルを再び始める。
ドリンクを作っているさつきちゃんの方へ歩いていくと「律子」と赤司くんに声をかけられた。
「今日もよろしく」
にっこり笑う赤司くん。だから私も「よろしくお願いします」と頭を下げた。
「ちょっと用事があるからついてきてくれないか」
「はい」
なんだかこの人には逆らわないほうがいい、と本能的に察知してついていく。でも不思議と不安はない。本当に不思議だ。
「用事ってなんなんですか」
「敬語はいいよ、ああ、用事?次の試合の資料をとりにいくんだ」
「うん」
頷くと赤司くんはこっちを振り向いて、少し離れて歩く私に手招きをした。隣を歩けという意味だろう。赤司くんはこの学校でもカッコイイって目立つほうだから女子に目をつけられるのが嫌だけど、隣に行く。歩いていると赤司くんはいきなり口を開いた。
「なんだ、隣にこれるのか」
「え、」
そういえば。私は兄の隣以外、長い間歩けないのに赤司くんの隣を歩いている。いつも心で渦巻く不安も鼓動もなかった。
「赤司くんは、大丈夫みたい」
赤司くんの顔を見ないまま言うと、赤司くんがくつくつ笑う声が聞こえた。ぱっと顔を上げるとこっちを見て困ったように柔らかい笑みを浮かべていた。
「なんだ、僕だけか」
彼を見ていても何も恐怖を感じない。

大丈夫だと笑うように心が泣いた
20120901
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