ばたばたと廊下のほうから足音が聞こえて我にかえった。わたしはゆっくり赤司くんから離れる。扉を開けて入ってきたのはすごくしんどそうなメンバー。その中には青峰くんもおにいちゃんもいて、さつきちゃんがストップウォッチと紙を赤司くんに見せる。赤司くんはそれに頷いて、「全員帰る用意をしろ」とジャージを翻した。ばちり、と青峰くんと目が合って、咄嗟のことに見つめてしまう。青峰くんはそのままにこっと笑った。わたしも頑張って笑顔を作り返すのだけれど、うまくできただろうか。
それから荷物をまとめ運び出していると青峰くんがやってきて「手伝うぞ」と、重いクーラーボックスやらを持ってくれた。
「あっ!大ちゃん私の時は持ってくれないのにー!」
さつきちゃんが「もう」と頬を膨らませると青峰くんは「おまえなんか怪力だろーがバぁカ」と嘲笑った。わたしも結構怪力なんだけどなあ、と、青峰くんに感謝しつつバケツを運ぶ。さつきちゃんはデータのまとめに追われて、わたしは青峰くんにとことこついて行ってバスに荷物をのせる。
「あのさ」
青峰くんは振り返って笑った。小学生のようにきらきらした笑顔。わたしは戸惑いながら「な、なに?」と言うと、彼はわたしからバケツをとりあげバスの中にのせた。
「俺、律子のこと好きだ、」
「え…」
「でも好きってだけで、付き合ってくれとかそんなの言わない。たださ、」
手を差し出され、彼と、彼の手を交互に見る。
「友達になってくれないか?」
わたしは一瞬躊躇って、その大きな手を握って「よろしくお願いします」と言った。

彼女が青峰と荷物を運びに行ったと聞いて、急いで後を追いかけたらこれだ。告白されているじゃないか。彼女の表情も青峰の表情も見えないけれど、不安で不安で仕方がない。友達になってくれ、という青峰に少しほっとしたがちらりとのぞけば彼女は青峰の手を握っているではないか。僕以外の手を握る彼女にどうしようもない醜い心が生まれた。

アポロンのくしゃみ
20121209
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -