真顔だった。
真顔で青峰くんの前まで歩み寄った赤司くんは「何もしてないな?」と、こちらからは見えないが、青峰くんの反応から、睨みをきかせたらしい。してない、と首を横に振る青峰くん。赤司くんは「本当だな?」ともう一歩歩み寄った。それで青峰くんがひっと眉間にしわを寄せ、悲しそうな顔でわたしを見た。助け舟をよこせ、という事だろうか。
「赤司くん、おしぼり洗っておいたよ」
「ああ、ありがとう」
振り向いた赤司くんはすごい笑顔で、それでわたしのほうへ歩み寄ってきた。怖くもなんともないのに、なんで青峰くんが赤司くんを恐れるのか今の表情からは微塵にもわからなかった。
「青峰、おまえも外周行って来い」
「お、おう」
逃げるように控え室を出て行く青峰くんを目で追って、それから赤司くんに視線を戻すと赤司くんは不安そうにわたしを見つめていた。
「なんにもないよ、本当に。遊ぶ約束しただけ」
「青峰と……?男が苦手だったんじゃないのか?」
「青峰くんは怖いけど、多分良い人だから」
「そうやって律子はいままで騙されてきたんじゃないの?優しいのは罪だよ」
え、と言葉に詰まるわたしの頬を赤司くんはそっと撫でた。それでわたしを胸の中におさめた。肉親以外の男に抱きしめられたのははじめてで、いつもならこんなに近くに男の人がいたら怖いって思うはずなのに、何故だか心地よかった。
「赤司くん、」
「律子は僕のだ、誰にもあげない」
きゅうっと胸が締め付けられた。

控え室をダイキが飛び出るから何かと思えば隙間から赤司くんと律子ちゃんが見えた。しかも抱き合っていて、ダイキはすごく悲しそうな表情で二人を見ていた。三角関係って難しいなあと思いながら見ていると、赤司くんが「律子は僕のだ、誰にもあげない」と言い放ちほんの僅かな隙間からのぞかせた瞳と瞳で目があった。これは見せ付けているんだな、赤司くんえげつないなってその場を立ち去る事にした。

旅の中で
20121114
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