青峰視点
彼女がこの頃家で「黄瀬くん」とよく口にする。学校でも黄瀬と仲良くしていて今日の体育の授業なんか黄瀬に笑顔を向け手を振っていた。仲良くなるのはいいけれど、黄瀬はモデルとかの関係で女子に人気があるし兄としてとても心配だ。黄瀬は黄瀬で彼女にべったりだし。
夕飯を食べながら黄瀬くん、リビングで黄瀬くん、寝る前に黄瀬くん。黄瀬くん黄瀬くんって、そんなに黄瀬くんが好きかよ、と思ってしまう。
「それでね、黄瀬くんが」
この頃の彼女はとても楽しそうだ。学校に行く前はすごく不安そうだったのに、行き始めてからは毎日が楽しそうで。それはいいのだが「黄瀬くん」が多すぎる。彼女の口から男の名前を聞いたのは初めてに等しい。
「ねえ、お兄ちゃん聞いてる?」
寝る前はいつも寝るまで話を聞いてやったり話してやったりする。頬を膨らませる彼女。
「そういえば今日、黒子くんが教室にいて一緒に話したよ!」
「はいはい、もう遅いんだから寝ないとな?明日学校行けねーぞ?」
彼女は「それは嫌、寝る!」と言って布団に潜った。よっぽど学校に行きたいのだろう。すぐに寝息が聞こえた。
学校に行く前は彼女が不安の中だったのに、今は俺が不安の中だ。

不安の中
20120816
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