うちの学校の体育の時間は最初に体育館で男女合同で先生の話を聞いた後、男子は運動場で、女子は体育館で行う。ただし私は気管支の事もあり教室で自習だ。先生はいない。運動場側の窓側に席があることで、運動場で体育の授業をするお兄ちゃんと黄瀬くんが見える。その他の人はあまり話したことがない。少し前に家に遊びに来た黒子くんもいるはずなんだけど見つけられない。
「黒子くん、どこなんだろ」
「ここにいます」
ぱっと教室を見回すとお兄ちゃんの席に黒子くんが座っていた。びっくりだ。どっからでてきた。
「えと、こんにちは。気づかなくてごめんなさい」
「いえ、僕も美樹さんに気づきませんでした」
失礼だなあ、と思いながら笑って、再び運動場を見る。男子はサッカーらしい。黄瀬くんの髪がきらきらしてて、運動場を駆ける姿に惚れ惚れした。自分にはできないことを、彼はやっている。汗をかきながら笑顔を作るなんて私には絶対にできないなあ、と溜息。
「美樹さんには美樹さんのいいところがありますよ。運動はできなくても」
柔らかく笑った。そういえば黒子くんもあんまり体力ないんだっけ。
「ところで、黒子くんは何で体育でてないの?」
「出遅れたんです。というかうちのクラスは奇数なので一人あまり、僕はいつも見学なのでここでもいいかな、と一週間くらい前からこうしています」
先客でした。
「そうなんですか」
「そういえば美樹さん。先ほどから青峰くんではなく黄瀬くんを見ている気がするのですが僕の気のせいでしょうか」
「え、黄瀬くんを見てますけど、お兄ちゃんを見なきゃいけなかったのでしょうか?」
首をかしげると黒子くんは「いえ」と言って笑った。
「青峰くんを見ているのかな、と思ったら黄瀬くんを見ていたので。青峰くん、この頃黄瀬くんに対してすごく鋭い視線を向けているので。美樹さんに黄瀬くんが何かしたのかな、と思ったのですが気のせいだったみたいです」
「お兄ちゃんは一方的に何故か黄瀬くんを変な人って思ってるんですよ。お兄ちゃんのほうがよっぽど変なのに」
そう言ったとき、黄瀬くんがこっちを見た。すごい笑顔で手をふってくる。私も笑顔で振り返すと、お兄ちゃんが黄瀬くんを叩いた。きっと、「試合に集中しろ」とか言ってるのであろう。
「美樹さんは優しいんですね」
「黒子くんも、優しいよ」
「ありがとうございます」
そのあと黄瀬くんの走る姿を少しだけカッコイイと思ってしまったことは、お兄ちゃんに内緒にしておこう。

あなたを追ってしまう私
20120815
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