学校は?
彼女にそうきくと気まずそうに視線を逸らして、えっと体調悪いから早退したんだけど途中で元気になって黄瀬くんのことが心配だから来ちゃった、と言った。絶対嘘だ。彼女はうそが下手くそだからすぐにわかる。背筋に冷たいものがぞわりと触れた。彼女を昨日悲しませてしかも今日は彼女に非行をっさせただなんて青峰っちが知ったらどう思うだろうか。……多分一発殴られるだけじゃすまないんじゃないだろうか?
でもそれとともに俺のことを心配してくれた彼女への愛おしさに胸を締め付けられた。酷いことをした、この、俺を。まだ気にかけてくれるなんて。
「紅茶コーヒーオレンジジュース麦茶…今日はちょっと暑いからオレンジジュースでいいっスかね…?」
「え、いいよ!大丈夫だよ?」
「はい、オレンジジュース!」
リビングのソファに座る彼女の前にオレンジジュースを出すと彼女は申し訳無さそうにありがとうと笑った。久し振りに見た気がする、彼女の笑顔。
そのあとすぐにリビングがシーンと静かになって、お互い何から喋って良いのかわからなくなった。気まずい。
「あ、あの、風邪大丈夫?」
「美樹っちがこれ持ってきてくれたから、すぐ治るっスよ。もう熱は下がりかけだし」
「よかった、黄瀬くんが風邪ひくなんてはじめてだから」
「バカは風邪ひかないっていうから俺自身吃驚してる」
「黄瀬くんはバカじゃないよ」
「いや、俺はバカっスよ」
隣に座って彼女のひんやりとした手をとって自分の頬にひっつける。彼女は手をびくりとさせた。
「ごめん、」
「え」
「悲しませてごめん、俺が不甲斐ないばっかりに、悲しませて。でも信じて、俺は美樹っち以外の子と絶対に付き合ったりしない。俺が好きなのは美樹っちだけだから」
つう、と涙が頬を伝って彼女の指先をぬらした。
「黄瀬くん泣かないで、」
彼女の顔を見ると、彼女も泣いていた。
「わたしも黄瀬くんのこと大好きで、ちょっと怖くなっただけで、でも大丈夫だから…わたし黄瀬くんのこと大好きだから」
お互いに気持ちがいっぱいいっぱいだ。
俺は自然に、彼女の瞼にキスをした。それから、唇に、キスをした。
「好き、美樹っち」
抱きしめた彼女は小さく震えていた。俺も震えていたと思う。

優しい怪獣
20130517
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