体育館から部室に移り、三人にぐるりと囲まれベンチに座って、泣いた事を少し恥ずかしく思いながら理由を話す事にした。黄瀬くんの彼女のうわさを聞いたこと、その彼女が自分なんかよりずっと黄瀬くんにお似合いということ。その話を聞いて、お兄ちゃんが怒って部室を出ようとするのをさつきちゃんと黒子くんが止めた。黒子くんは私の顔を覗き込んで「それは辛かったですね」というのを聞いてまた泣いてしまった。こんなに泣いたのは初めてかもしれない。体中の水分が流れてしまった気分だ。
「美樹さんは黄瀬くんが、美樹さん以外に彼女をつくると思いますか?」
「えっ」
「黄瀬くんは美樹さんのことが大好きなのに、それ以外に彼女をつくると思いますか、そんな中途半端な人間に見えますか?」
「黄瀬くんは中途半端なんかじゃない…と思います」
「じゃあ黄瀬くんを信じてあげてください」
にこっと黒子くんが微笑んで、「今日はもう帰って、明日また黄瀬くんと決着をつけてください」と言った。わたしも少し痛む目を細めて微笑んだ。
お兄ちゃんもさつきちゃんもにっこり笑って「帰ろう」と言った。

「もしもし黒子っち「あんた何馬鹿なことしてるんですか」
「えっ?」
「美樹さんがいるのに彼女なんて作ってるんじゃないですよ」
「黒子っち言ってる意味が「だから言ってる通りですよ」
「はい?」
「美樹さん、今日泣いてましたよ。黄瀬くんに新しい彼女ができたって。それ聞いて不安になって、明日青峰くんに殺される事を覚悟して置いてください」
「ごめんっス、黒子っち。何のことか全くわからないっス」
「黄瀬くんの彼女って主張する女子がいると美樹さん聞いて、泣いて体育館まで来たんですよ」
「えっ」
「ちゃんと、謝ってください」
電話がぶちりと切れた。あんなに怒っている黒子っちとあうのは初めてだ。話の内容にずきりと胸を痛め、美樹っちに電話をかけようとするも手が震えて、視界が滲んでかけられない。大好きな彼女を不安にさせた自分が情けなさすぎる。
俺は初めて、自分を情けないと言って泣いた。

彼女のために泣けますか
20130319
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