病院の先生にこっそり許可をいただいて病院をぬける。お母さんもお父さんも今日はお仕事で病院に来ないし、いざとなったらお兄ちゃんがフォローしてくれるらしい。さつきちゃんと電車に揺られながらお菓子を食べたり景色を見たりしているうちに撮影現場のある海へとたどり着いた。気持ちいい。
「美樹っち!桃っち!」
「黄瀬くん!」
駅につくなり黄瀬くんに出会った。
「む、迎えに来てくれたの?」
「当たり前じゃないっスか、美樹っちがきてくれるのに出迎えがないなんてありえないっスよ!」
「ありがとう」
「ほら行こう、桃っちも置いて行くっスよ!」
「あ、わたしちょっと用があるから先に行ってて!」
ものすごい速さで走り去っていくさつきちゃん。用事があるなんてきいてないけど…あれ?
歩きながら考えていると、黄瀬くんはわたしの顔を覗き込んで「考え事っスか?」ときいた。わたしは顔を真っ赤にして「いや、違うよ。黄瀬くんと久し振りに会えて嬉しいなあって思って!」自分で言ってて恥ずかしくなった。黄瀬くんも顔を真っ赤にして「そう言ってもらえると嬉しいっス」と笑った。
「あのね、誕生日プレゼントありがとう!本当に嬉しかった!」
「喜んでいただけて光栄っスよ」
へにゃり、わたしも黄瀬くんも同じように笑ったと思う。
撮影ってどこでやってるの?もうちょっと先の海っスよ。へえ、どのくらいやるの?あと一ヶ月ちょいかな、短編映画だし。楽しい?うーん、仕事っスからね。
「あっいたいた!涼太ー!」
急に女の子の声が聞こえる。黄瀬くんは「あちゃー」とでも言いそうな表情でわたしたちのほうに走ってくる女の子を見た。すっごく綺麗な子。一緒に撮影をしている子だろうか。
「涼太?その子誰?」
「えっと、中学のクラスメイトで…」
「週刊誌にのったりしたらどうするわけ?何考えてるの?そういうのが一人いるとつぶれちゃうんだよ?それより撮影始まるんだけど」
じろり、と横目で見られてどうしていいかわからなくなる。黄瀬くんの後ろに身体を隠すようにして壁をつくる。
「行こ!」
ぐんぐんひっぱられる黄瀬くん。「この先の海だから!」とわたしに笑顔で叫ぶ黄瀬くん。手をたどたどしくふって笑顔で頷く。
つぶれちゃうんだよ…という言葉が妙に耳から離れない。
独りぼっちになってしまった。

星のような涙にキス
20130109
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