うちの学校は八月の中旬に始業式があったため誕生日は明日だ。毎年お母さんとケーキを作ったりするのだが、今年は生憎入院をしていたため作ったケーキを病院で食べる事になっている。外出許可はおりるらしいが、お母さんが病院で誕生日をしようと言ったため病院で過ごす事に。もしこれがわたしの身体を気づかっての事ならば、今週末は黄瀬くんを見に行く約束をさつきちゃんとしてしまったことに少しの罪悪感が芽生える。
「携帯……」
昔はなくても対して困らなかった携帯電話も、今は唯一と言っても過言ではないコミュニケーションツールとなってしまった。黄瀬くんと暫くなんのお話もしていないし、さつきちゃんも不定期で来るから寂しくて。
「入るぞ」
ノックが二つ聞こえて入ってきたのはおにいちゃん。面会時間ぎりぎり。お兄ちゃんの額には汗がびっしょりだった。
「お兄ちゃん?」
「元気か?」
ベッドにぎしりと座ってお兄ちゃんはわたしの頭を撫でた。少し荒々しくてなんだかいつもと違う感じ。
「うん、元気だよ」
「そうか」
にっこり笑う。
「そういえば美樹、今週末さつきと出かけるって?」
「えっ」
「さつきに聞いた。黄瀬のところ行くんだろ?海……だったか?」
「な、なんでさつきちゃん…」
「あのなあ、」
ちょっとくらい俺のこと頼れっつの。
そう言ってお兄ちゃんは立ち上がり思い出したようにエナメルバッグからコンビニの袋を出した。わたしの好きなプリンを一つ冷蔵庫に入れてくれる。
「お兄ちゃん、」
「明日外出用の服とか持ってきてやるから。体調崩さねえようにちゃんと寝てろ。んじゃ、おやすみ」
「お、おやすみ」
静かになった部屋で時計の秒針だけが響く。
今日のお兄ちゃん、少し寂しそうだった。気のせいじゃ、ないよね。

戻らない、戻れない
20121223
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